先日WOWOWで放映していた「ドライブ・マイ・カー」を鑑賞。我が家のテレビで見る映画は今年に入ってこれが62本目となる。

普段、どの映画を鑑賞するかという私の選択基準の中には、このテの作品は入っていない。アカデミー賞であれだけ騒がれなかったら見ていないはずである。カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」のときと同じミーハーな動機で、なんともおはずかしい。
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3時間という長尺だし、前評判を聞く限りおそらく退屈さに耐えながらの鑑賞になるのは覚悟の上で臨んだ。まずは、冒頭からの西島秀俊と霧島れいかの濃厚なシーンに、70過ぎのジジイは退屈どころか戸惑ってしまった。歳をとるとこういう刺激のある直接的な描写は照れるばかりでどうもいけない。これでは退屈でけへんやないの。

主人公の職業が舞台演出家兼俳優ということで、公演準備のため広島に乗り込むあたりから、やっとストーリーが見え始めた。主人公の職業柄、劇中劇のシーンやら、舞台稽古の様子やらが、大した起伏も無く、淡々と、延々と続けられるのに、覚悟していた退屈さは不思議と感じなかった。

この不思議さはおそらく、舞台稽古が進んでいく途中途中に、主人公の過去に関わる話や、そのほかの登場人物のストーリーを少しずつ挟みながら明かしていく脚本が、巧みだったからでしょう。、

公演の世話役で登場する韓国人とその奥さんの醸し出す雰囲気がなんとも心地よかったし、チェーホフとかの外国の文学にはまったく疎いが、舞台の登場人物が多国籍で、それぞれの母国語で喋り合うという設定(こういった舞台劇はまったく知らなかった)も興味深く、3時間という上映時間の長さも気にならなかった。

私は映画ファンと自称しながら洋画の方に偏っている。私の映画の楽しみは<非日常の体験>で、邦画は出演者も内容も含めてテレビの延長のようで、映画館に足を運びたくなるような作品がどうも少ない。という印象をずっと持っている。この作品はそんな私の偏見をちょっとだけ変えてくれた。

10日ほど前に、これもWOWOWで鑑賞したキムタクと長澤まさみの「マスカレード・ナイト」は、それこそテレビでしょっちゅう見る俳優やタレントが次々と入れ替わり登場し、目まぐるしく場面転換する作品だった。この「ドライブ・マイ・カー」とは両極端の印象である。

アレも映画、コレも映画。だから映画はおもしろい。