2021年もあっという間に気がついたら5月。これが今年になって初めての映画館とは自分でもびっくり。これも憎ったらしいコロナの所為でしかたない。久しぶりのTOHOシネマズ橿原は、121人分の座席数に対し観客は私を含め13名でした。
210513_Nomadland
さてその「ノマドランド」。今年のアカデミー賞の作品賞、監督賞、主演女優賞を獲ったということで楽しみにしていたけれど、ちょっと期待が大きすぎたか。おそらくこんな映画やろうなぁと想像していた通りの作品で、それ以上でも以下でもなかった。

ノマド(Nomad)と呼ばれる、キャンピングカーで移動しながら生活する人たちの日常が淡々と描かれ、展開に大きな起伏も無ければクライマックスも無い。私にはキャンピングカーが幌馬車のように見えて、まるでドンパチの無い西部劇のように感じてしまった。

それでも最後まで飽きさせなかったのは、アメリカの広大な景色とカメラワーク、バックに流れるピアノの旋律、主人公の存在感が大きかったからでしょう。それと、今でもこういった人たちが実在するということが興味深かった。(原作はノンフィクション『ノマド:漂流する高齢労働者たち』(春秋社刊)で、実際のノマドの人たちも出演している)

主人公のフランシス・マクドーマンドは「ファーゴ」「スリー・ビルボード」に続いて3度目の主演女優賞で、この2本も好きな作品。また見たくなった。このようなタイプの女優は、今の我が国では思いつかない。強いて挙げれば、杉村春子、岸田今日子(古いねぇ)といったところか。

物語の序盤、主人公がかつて教師をしていたときの生徒に、スーパーで偶然会うシーンがあった。そこでかつての生徒が「先生 ホームレスになったの?」という問いに「ホームレスじゃないよ、ハウスレスだよ」と答えていた。

この作品を見終えて、その違いが分かったような気がした。ハウス(家)は無いけど、ホーム(故郷や家族を想う心)は失っていないよ。主人公はそんなことが言いたかったんだと受け取りました。