この5月になると90歳にお成りになるクリント・イーストウッド御大の、これがなんと40本目の監督作品「リチャード・ジュエル」見てきました。今や押しも押されもせぬ巨匠とお成りになった監督ぶりは相変わらずで、まさしくこれが安定・安心のイーストウッド作品。楽しませてもらいました。
「運び屋」のクリント・イーストウッド監督が1996年アトランタで起きた爆弾テロ事件の実話を基に描く社会派サスペンス。報道の過熱や世間の誹謗中傷の拡散で冤罪が生まれやすくなった現代社会を背景に、テロ事件の容疑者とされた警備員と真実を追う弁護士の姿を描く。
その警備員リチャード・ジュエルは、爆弾が入ったリュックサックの第一発見者であり、爆発の被害を最小限に止めたヒーローとして称賛されるも、FBIに容疑者としてマークされてからは、非難の標的として世間に晒される。ヒーローからテロ容疑者への扱い。掌を返すように誘導するのはマスメディアである。コワい。コワい。
24年前のこの事件のときでさえコレである。ネット社会の現在はもっとコワい。飛び交う情報はマスメディアだけではない。どこの誰だかわからない人物が、無責任につぶやいた言葉や映像が拡散し、お笑い芸人やタレントがワイドショーとかバラエティでコメントした(どっちでもいいようなしょうもない)ことがYahooニュースに載る時代である。
それが良いことなのか・・・。私にはとても良いこととは思えない。そんなことを考えさせられた作品だった。
弁護士役のサム・ロックウェルは「グリーンマイル」や「カウボーイ&エイリアン」では悪役ということもあり嫌な印象しかなかったが、「スリービルボード」では悪役にもかかわらず、コロッと印象が良くなった。本作でも「ジョジョ・ラビット」でもいい役をもらって好演している。
先日、小欄で紹介したWOWOWの番組「W座からの招待状」で小山薫堂が、イーストウッドのところには、監督をしてもらおうと優れた脚本がいっぱい集まってくるんだと思いますよ。と、そんなことを言っていた。
敬愛するイーストウッド様 たくさんの脚本に囲まれて、次は何を撮ろうかと迷われているのでしょうか。もうお歳なんですよ。どうか無理をしないでいただきたい。