シヌマDEシネマ/ハリー東森

2018年05月

先々週、東北旅行を友人と楽しんでいる間、家内は家で愛犬と留守番だった。今度はその逆になり、先週末から家内が旅行に出かけている。独身時代や、短い期間ではあったが単身赴任も経験しているから、ひとり暮らしは苦にならない。反対にこんなときこそ“鬼の居ぬ間のナントカ”である。

そうは言ってみても、録り溜めた映画をぐうたらべったりと見るくらいなのだが・・・。そんな中、名古屋での高校時代からの友人Kちゃんが遊びに来てくれた。これまで何回か来る度に、関西のあっちこっちを案内している。今回も彼が行ってみたいというあっちこっちを、連れて回った。

まずは、井出商店の中華そばが喰いたいと。いわゆる和歌山ラーメンである。私が和歌山県のH市に住んでいるからといって、和歌山市も白浜も、すぐ近くだと勘違いされるから困るのだ。これが関西人でない人たちの アサハカサ である。和歌山県も広いのだ。

京阪奈道路が奈良の橿原から和歌山まで繋がってだいぶ便利になった。それでも我が家から和歌山市内にある井出商店までは車で小一時間かかった。この井出商店には家内と数年前に来たことがある。まぁまぁフツウのラーメンという印象だった。
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開店30分前に到着したのに、店の前はすでに十数人の行列ができていた。開店時間にはざっと40人ほどの行列である。長いこと並んで中華そば(700円)を食べたKちゃんの感想。「これまで食ったラーメンで一番うんみゃあわ。どえりゃぁうまかったでいかんがや」そりゃぁ良かった。連れて来た甲斐がありました。

隣の席で食べていた青年はカタコトの日本語だった。韓国からの旅行客のようである。海外からの観光客もここまで足を伸ばしているわけだ。インバウンドだねぇ。

次の日は黒門市場に行きたいと。連れていって驚いた。外国からの観光客で溢れているではないの。中国、韓国が多そうだけれど、東南アジア系や白人も目についた。日本人は1~2割くらいか。売る側の日本人のお兄ちゃんは各国の言葉を巧みに操って対応していて、思わず聞き入ってしまった。売る側のオバサンも中国人がちらほら。
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黒門市場の風景が変わってしまった。いいことなのか悪いことなのか。先日、なにかのテレビ番組で、橋本徹 前大阪市長が「世界の都市の中で、外国からの観光客増加率トップは大阪市なんですよ」と言っていたのを思い出した。まさしくそれを実感する。

ということで、名古屋人のKちゃんは中国人や韓国人に混じって、ベッタベタの関西を体験して帰っていきました。さあ、録り溜めた映画をぐうたらべったりと鑑賞することにしようか。

監督がジョージ・クルーニー、脚本が「ファーゴ」「ノーカントリー」「トゥルー・グリッド」のコーエン兄弟、主演がマット・デイモンとなると、もうこれは見たくなる。で「サバービコン 仮面を被った街」見てきました。
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時代は1950年代後半、私が幼い頃テレビで見た「パパ大好き」や「奥様は魔女」のような、アメリカとはなんと豊かでシアワセな国なんだろう、と思わせたそんな時代が再現されて、なんともほのぼのとして懐かしい風景から、話は始まる。

雑誌スクリーン6月号の解説によると、“1950年代にペンシルバニア州レビットタウンで実際に発生した人種差別暴動を下敷きに、平和な住宅地に潜む闇をあぶり出した”ストーリーとある。その住宅地を架空のサバービコンという町に置き換え、白人だけが住む住宅地に黒人一家が引っ越してきたことから話はややこしくなる。

その黒人家族の隣に住まうガードナー(マット・デイモン)一家の息子が、その隣の黒人少年と、ごく自然に接したことにより住民からの反感を買う。そんな中、ガードナーの家に賊が入り、奥さん(ジュリアン・ムーア)が殺されて・・・。

地域住民の、黒人一家への排斥運動を絡めながら、話は思わぬ方向に展開していく。後半はヒッチコック風のテイストがあちこちの描写で感じられ、なんかうれしくなってしまった。コワくて悲惨なのにブラックなユーモアがあって、こういう作品、好きだねぇ。

マット・デイモンはジェイソン・ボーンの俊敏な動きとはうって変わって、小太りのどこにでもいるような中年のサラリーマンを演じて上手い。映画賞にノミネートされてもおかしくない。ジェイソン・ボーンでは縁が無いはずだから、こういった役で獲らないと、獲る機会が無くなるわな。

チラッと描写のあったセックスシーンは、(ヘンな誤解を覚悟で吐露すれば)そこそこ品もあり、ウィットもあって笑えたねぇ。「シェイプ・オブ・ウォーター」や「レッド・スパロー」とは大違いである。

ジョージ・クルーニーの監督作は、本作と「ミケランジェロ・プロジェクト」しか見ていないが、彼の暖かい人間性が伝わってきて、本作も好きな作品のひとつとなった。この人も、もっと評価されてもいいと思うのだが・・・。

ゴールデンウィーク明けの先週、東北に行っていました。昔の職場の同僚NさんとFさん3人で、レンタカーを駆って仙台から青森まで、4泊5日の旅。

NさんFさんとは、桜や紅葉の季節にカメラを構えてブラブラしたあと、(酒には弱いのにふたりにつき合って)一杯呑む。というコースをこのところ続けていて、その延長で今回の旅行となった。東北もめっぽう詳しいと自負する、九州出身のFさんが旅程を立て、宿泊先や飛行機の予約など全ての段取りをしてくれた。

東北というと、社会人になって2年目の春に、当時の職場だった奈良の独身寮から相部屋だった同期のI君と一緒に旅行したことを思い出す。いまから48年前、19の春である。生意気にもマイカーを持っていた。姉夫婦から譲ってもらったファミリア1000という車種で、行きは日本海回りで青森まで、帰りは太平洋回りで2,000kmのドライブだった。

その後、仕事では何回か行ってはいるが、個人的な旅行となると、とんと記憶が定かでない。家内と結婚する前後に平泉に行ったような気がするのだが、家内は「あなたとは行っていない」と抜かす。記憶は時とともに、都合がいいように風化したり熟成されるようである。

さて今回の東北旅行は、天気には恵まれなかったが初めて訪れる地も多く、オッサン3人の愉しく、中味の濃い旅だった。特に印象的だったのは、まさしく秘湯だった乳頭温泉、それに奥入瀬の渓流に降りそそぐ新緑も鮮やかだった。
プランを立てていただいたFさんに感謝。以下はその画像

1日目 松島五大堂、瑞巌寺のあの時の立て札、青葉城
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2日目 平泉中尊寺弁景堂、とおの物語の館の柳田國男像と館内ディスプレイ、宮沢賢治記念館
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3日目 盛岡わんこそば老舗、角館、田沢湖
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乳頭温泉 鶴の湯
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4日目 十和田湖乙女の像、奥入瀬
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5日目 青森
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青森市内はどこに行っても、津軽じょんがらとねぶた祭りという印象を受けた。この夏のねぶた祭りには、「あなたとは行っていない」と抜かす家内を連れて行こうと決めかけた。が、手元にあるJTB旅物語のパンフレットを見ると、「星のリゾートに泊まる 東北四大夏祭り4日間」ひとり18万円とあるではないか。この2月末に行った南仏6泊8日ツアーよりも高いのだ。
おみやげに買った、ねぶた祭りのフィギアで我慢して、行ったことにしておこう。
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このテの作品は、もう随分長いこと見た記憶がない。で、たまにはいいか、ということで「君の名前で僕を呼んで」見てきました。“このテの作品”というのは、いわゆる男・女の機微(いやいやこれは男・男だな)を描いた作品である。
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宣伝チラシに掲載されたストーリーをそのまま引用すると、

1983年夏、北イタリアの避暑地。17歳のエリオは、アメリカからやって来た24歳の大学院生オリヴァーと出会う。彼は大学教授の父の助手で、夏の間をエリオたち家族と暮す。はじめは自信に満ちたオリヴァーの態度に反発を感じるエリオだったが、まるで不思議な磁石があるように、ふたりは引きつけあったり反発したり、いつしか近づいていく。やがて激しく恋に落ちるふたり。しかし夏の終わりとともにオリヴァーが去る日が近づく・・・。

と、つまりはこのテの作品である。ひと言でいうと、山口百恵の「ひと夏の経験」だな。(ちょっと古いか)

これを、70歳近いオッサンが見るのである。まだまだ若く、青くさい頃の「卒業」や「男と女」を見たときの、あの震えるような感情が蘇るような、そんな期待をもって鑑賞した。が・・・そうでもなかった。

10代20代の感受性豊かなときに見ていたら、また感想も変わったものになっていたのかもしれない。あれから半世紀である。いまや70近いオッサンは、肉体と共に感性も枯れてしまったのか。そんな自分にちょっとガッカリしてしまった。

それでも、イタリア北部の村や自然の風景は魅力的だったし、主人公エリオの家庭の描き方がなんとも暖かく羨ましかった。息子エリオに寛容に接する父親(マイケル・スタールバーグ、「シェイプ・オブ・ウォーター」ではソ連のスパイを演じていた)が終盤、悲しみに暮れる息子に投げかける言葉にはやさしさが溢れていた。

それとなんといってもエリオを演じたティモシー・シャラメですよ。イタリア語はもちろん、英語も話すし、夏休みでフランスから来た女の子にはフランス語も流暢に使うのには驚いた。ピアノを弾けばバッハの曲をリスト風に弾くのである。そんな17歳がどこにおる。

オリヴァーを演じたアーミー・ハマーは「ローン・レンジャー」や「コードネーム U.N.C.L.E.」でアクション俳優というイメージが強かったが、ガラリと印象が変わっても悪くなかった。このふたりの嫌味のない清潔そうなキャスティングが良かったんでしょう。

世の若い女性からオバサンまで、虜にするんでしょうなぁ。

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