シヌマDEシネマ/ハリー東森

2017年12月

この一年、劇場で鑑賞した映画が31本。毎年述べていることですが、映画館に足を運び、お金を払って映画を見たからには、その作品のどこが良かったか、どこが気に入らなかったか、 “映画への想い” をちゃんと語るのが映画ファンだと思いつつ、小欄を綴っています。映画が好きだからこそ “映画に媚びない” 姿勢で、来年も見るぞぉ。

さて、その31本を

  A: 良かった  (お値段以上)
  B: まぁまぁ  (お値段そこそこ)
  C: もうひとつ (期待外れ)
  D: ダメ    (カネ返せ)

と大きく分け、さらに良かった順に並べてみた。料理の 美味い/不味い は食べる人の好みで変わるもの。映画も同じで、私の “いいね!” があなたの “いいね!” とは限りません。私の “ダメ” もまた然り。だから映画はおもしろい。

タイトルをクリックまたはタップするとそれぞれの映画感想にジャンプします。ぜひ詳細もご一読ください。

 1 A ダンケルク
     ダンケルクの町を徘徊する数人の英国兵に銃
     弾が襲いかかるその音響のすさまじさがすご
     かった。ダンケルクの海岸に溢れる英国軍に
     空から襲いかかるメッサーシュミットのシー
     ンがすごかった。英国兵でぎゅうぎゅう詰め
     の輸送船に魚雷が命中したときのシーンがす
     ごかった。それから・・・とにかくすごかっ
     た

 2 A ラ・ラ・ランド
     若い男女の夢と恋愛模様・・・若いっていい
     ねぇ。映画ってやっぱりいいねぇ。ラストの
     オチは、「シェルブールの雨傘」を思い起こ
     させて、切なく陰湿になると思いきや、明る
     くあっさりしていて好感が持てました

     このテの宇宙モノが掃いて捨てるほど作られ
     ても、やっぱりこれが“老舗”の安定感です
     よ。そしてオジサンはかわゆいレイを応援し
     てしまうのだ

     映像と音楽がこれだけ巧みにシンクロしてい
     た作品となると、過去にもちょっと記憶にご
     ざいません

 5 A メッセージ
     エイリアンと接することによって辿ることに
     なる主人公の衝撃的体験。観客は固定概念を
     覆され心地よいダマされ方を体験する

 6 A ドリーム
     黒人として世に出るには、スポーツ選手かミ
     ュージシャンになるしかないといわれた1960
     年代。虐げられながらも頭脳で貢献した黒人
     女性たちの、なんと心地よく、清々しいこと
     ですか

     重い。長い。じれったい。それがいい。

     アメリカ銃規制法案に群がる関連企業、支援
     団体、マスメディア。カネと権力が蠢き、議
     員がなびく。コワいねぇ

     ウェストバージニアの田舎臭いローカルな味
     わいの犯罪映画といったところで、こういう
     の嫌いではない

     メル・ギブソンのベスト監督三部作は、1位
     「ブレイブハート」、2位「ハクソー・リッ
     ジ」、3位「アポカリプト」。これで決まり

11 B ゲット・アウト
     アフリカ系アメリカ人から白人に対しての、
     皮肉なメッセージ。奇想天外ブラックコメ
     ディ

     西部劇はやっぱりいいねぇ。こういうの大好
     き

     大根役者のベン・アフレックにはうってつけ
     の役でした

     東西を分けた壁が崩壊寸前のベルリン。暗躍
     するスパイ。そのスパイが美貌のシャーリー
     ズ・セロンだもん。見ちゃうわなぁ

     悲しく暗いアメリカン・ホームドラマ。アメ
     リカの片田舎での生活がしみじみと伝わって
     きました

     安っぽいアクション映画のタッチ、笑えてし
     まう殺し屋世界のルール、悪い奴らがバッタ
     バッタとやられまくるのは前作とまったく同
     じなのに、やっぱり面白かったぁ

     ボストンマラソン テロ事件に関わらざるを
     得なかった人たちの様子が、簡潔かつ丁寧に
     描かれていて、人間群像ドラマとしても見ご
     たえがありました

18 B ムーンライト
     アメリカの底辺で暮す人たち。彼らが仰ぎ見
     るのはサンシャインでなく、青白く光るムー
     ンライトか

     シーザーと呼ばれたチンパンジーの一代記。
     これで完結。猿の一代記とバカにしてはいけ
     ない。このサル、人間よりも人間臭いのだ。
     いや、サル臭いのだ

     日本人がゴジラが好きなように、アメリカ人
     はコングが好きなんだ

     相変わらずの取って付けたような話で、よく
     もまぁ最後まで引っ張るもんだと感心します

22 C パッセンジャー
     宣伝文句にある、「2人だけが目覚めた」「理
     由は1つ」これは ウソ である。オーバーな
     宣伝文句もよろしくないが、ウソはいけない

     旧ユーゴスラビアの山岳地帯をシュッポシュ
     ッポと走る光景は、たとえCG合成とはいえ、
     これで贅沢な列車旅行が疑似体験できたと思
     ったら・・・まぁいいか

     話のとっかかりのプロットや、ヒロインのキ
     ャラクターが第一作とおなじでは、もうこれ
     はアカンやないの

     高校生の青春映画+テーマパークのアトラク
     ション体験。こういうのオジサンにはどっち
     ゃでもええんやわ

26 C LOGAN/ローガン
     ローガンとプロフェッサーの“終活”なんか
     見たくなかった。上品で知的だったプロフェ
     ッサーの、こんな姿は見たくなかった

27 D ライフ
     「エイリアン」とどこがちゃうの

     主演がケビン・コスナー、共演がトミー・リ
     ー・ジョーンズ、ゲーリー・オールドマンの
     豪華俳優アクションものなのに、もう内容を
     忘れてもうた

     中国マネーのギャラの多さに目が眩んだマッ
     ト・デイモン。脚本をちゃんと読まずに出た
     んやでぇ。知らんけど

     当たり外れの少ないトム・クルーズなのに、
     こんなのに出ていてはイカンがね

     こういったゲーム感覚の映画が今の若いのに
     は受けるのかねぇ。最初から最後まで入り込
     めず、シラケッぱなしでした

ということで、だいぶヤバくなってきたボケ進行防止のためにも、新たな年も小欄を細々と続けていくつもりの ハリー東森 です。来年もよろしく。

この一年、我が家のテレビで見てきた映画を振り返りたい。ほとんどをWOWOW(一部はNHK BS、地上波民放)で鑑賞した映画の本数は108本。うち初見が60本だった。辛抱ができずに途中で放棄した作品もけっこうあったがそれらは除外している。

初見60本のうち邦画が18本。いちばん印象に残った作品は「SCOOP!」だった。何ごとも優等生という印象でファンが多いと思っていた福山雅治が、けっこうハスカイな役で出ていて意外だった。共演の二階堂ふみも上手かった。

あと邦画で上げるとしたら・・・特に無かった。相も変わらず出てくるのはテレビでしょっちゅう見る役者やタレントばかりでテレビドラマの様である。これではやっぱり映画館に足を運ぶ気にもならない。邦画はテレビの延長でしかないという残念な想いは免れない。いまや、映画でしか見ることのできない俳優は、吉永小百合くらいか。高倉健や渥美清はもういない。

洋画での一番は、直近に鑑賞した「手紙は憶えている」だな。アウシュビッツ収容所から生き残った90歳の老人が、認知症を患いながらも、アメリカに亡命しているかつての収容所の看守を探し出し、復讐しようとするが・・・というお話。「サウンド・オブ・ミュージック」で「エーデルワイス」を唄ったクリストファー・プラマーのボケ老人ぶりが、もう少し先の自分のようで、身につまされて・・・いやー面白かったぁ。

ということで、その108本を鑑賞した順に並べてみた。( )内は制作年度または公開された年。★は初見の作品。赤字のタイトルは邦画

  1 (2015年)★ X-ミッション
  2 (2002年)★ 模倣犯
  3 (2015年)★ 母と暮せば
  4 (2015年)★ ザ・ガンマン
  5 (2016年)★ ザ・ブリザード
  6 (2014年)★ オートマタ
  7 (2016年)★ アナライザー
  8 (2015年)★ SPY/スパイ
  9 (2015年)★ エージェント・ウルトラ
 10 (2015年)★ アイアムアヒーロー
 11 (1976年)  大陸横断超特急
 12 (2015年)★ エクストラクション
 13 (2016年)  砂上の法廷
 14 (2016年)★ 家族はつらいよ
 15 (2016年)  バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生
 16 (2015年)  ヘイトフル・エイト
 17 (2006年)  プレステージ
 18 (2016年)★ 殿、利息でござる!
 19 (2015年)★ ルーム
 20 (2015年)  オデッセイ
 21 (2005年)  キングダム・オブ・ヘブン
 22 (2015年)★ ブラックボード 戦火を生きて
 23 (2011年)★  ヘルプ~心がつなぐストーリー~ 
 24 (2015年)  レヴェナント:蘇りし者
 25 (1993年)  ジェロニモ
 26 (2015年)  スポットライト 世紀のスクープ
 27 (2016年)★ エヴェレスト 神々の山嶺
 28 (1995年)  ユージュアル・サスペクツ
 29 (2016年)★ 13時間 ベンガジの秘密の戦士
 30 (1992年)  ア・フュー・グッドメン
 31 (2016年)★ シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
 32 (2015年)  ボーダーライン
 33 (2016年)★ テラフォーマーズ
 34 (1978年)  料理長(シェフ)殿ご用心
 35 (2016年)★ 64-ロクヨン-前編
 36 (2016年)★ 64-ロクヨン-後編
 37 (2015年)★ Mr.ホームズ 名探偵最後の事件
 38 (2004年)★ ダイヤモンド・イン・パラダイス
 39 (2002年)  アイ・スパイ
 40 (1969年)  ワイルド・バンチ
 41 (2015年)★ アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち
 42 (2015年)★ フィフス・ウェイブ
 43 (2016年)★ X-MEN:アポカリプス
 44 (2015年)  ジュラシック・ワールド
 45 (2015年)★ レジェンド 狂気の美学
 46 (1976年)  鷲は舞いおりた
 47 (1999年)  ペイバック
 48 (2016年)  ハドソン川の奇跡
 49 (2016年)  シン・ゴジラ
 50 (2016年)  インフェルノ
 51 (2014年)  ジョン・ウィック
 52 (2016年)★ すばらしき映画音楽たち
 53 (1995年)  ブレイブハート
 54 (2015年)★ シークレット・アイズ
 55 (2016年)  スター・トレック BEYOND
 56 (2011年)  スペシャル・フォース
 57 (2011年)  ドライヴ
 58 (2016年)★ 盗聴者
 59 (2002年)  バイオハザード
 60 (2004年)  バイオハザードⅡ アポカリプス
 61 (2007年)  バイオハザードⅢ
 62 (2010年)  バイオハザードⅣ アフターライフ
 63 (2012年)  バイオハザードV:リトリビューション
 64 (2016年)★ バイオハザード:ザ・ファイナル
 65 (2016年)★ メカニック:ワールドミッション
 66 (2016年)★ グッドモーニングショー
 67 (2016年)★ ホワイト・バレット
 68 (2016年)★ キング・オブ・エジプト
 69 (1965年)  ダンディー少佐
 70 (2015年)★ セルフレス/覚醒した記憶
 71 (2016年)★ SCOOP!
 72 (1991年)  レザボア・ドッグス
 73 (2014年)★ シークレット・デイ
 74 (2004年)  テイキング・ライブス
 75 (2012年)  プロメテウス
 76 (2016年)  われらが背きし者
 77 (2016年)★ ミュージアム
 78 (2017年)★ トリプルX:再起動
 79 (1976年)  マラソンマン
 80 (1976年)  大いなる決闘
 81 (1972年)★ ワイルド・アパッチ
 82 (1976年)  ファミリー・プロット
 83 (2016年)  ジャック・リーチャー Never go back
 84 (2016年)★ スタンドオフ
 85 (2004年)  クライシス・オブ・アメリカ
 86 (1999年)  ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
 87 (2016年)★ マリアンヌ
 88 (2017年)★ 破門 ふたりのヤクギョーガミ
 89 (1982年)  ブレード・ランナー
 90 (2014年)★ 土竜の唄 潜入捜査官
 91 (2016年)★ 土竜の唄 香港狂騒曲
 92 (2016年)★ 聖の青春
 93 (2016年)★ 君の名は。
 94 (2016年)  ザ・コンサルタント
 95 (2016年)★ ジェーン
 96 (2015年)★ ワイルドガン
 97 (2015年)★ ザ・スクワッド
 98 (2017年)★ 本能寺ホテル
 99 (2010年)  ザ・ウォーカー
100 (2013年)★ ニック/NICK 狼の掟 
101 (2013年)★ ニック/NICK リベンジ
102 (2015年)★ ニック/NICK ハードペイン
103 (2015年)★ ニック/NICK ラスト・フューリー
104 (2016年)★ ニック/NICK アウトサイダー
105 (1974年)  オリエント急行殺人事件
106 (1966年)★ 将軍たちの夜
107 (1968年)  レッド・ムーン
108 (2015年)★ 手紙は憶えている

映画館で鑑賞するのはこれが今年最後になるはずの「スターウォーズ/最後のジェダイ」見てきました。2017年の締めくくりにふさわしい作品で、これで気持ちよく年が越せそうです。いよいよこれがラストで、ここから後は“To be continue”だろうと思わせるシーンが終盤に何回も出てきての、上映時間2時間半はまったく長く感じさせず、心地よく、楽しく、鑑賞できました。
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実のところ今作は、2年前に公開されたエピソード7から、最終章エピソード9への“つなぎ”の位置づけくらいだろうと、あまり期待はしなかった。ところがどっこい、あれよあれよとここまで話が進むとは意外だった。

1977年に第一作が公開されてから40年。この作品がきっかけになって、このテの宇宙モノが掃いて捨てるほど作られてきたけれど、出てくる異星の生きものたちの奇抜さや、異星での戦闘シーンだけを取り上げても、掃いて捨てるほど作られてきた他の作品にはやっぱり負けていない。このシリーズが宇宙モノの“老舗”という印象を、あらためて持った。

さらに加えて出演陣がいい。なんといっても主人公レイ(デイジー・リドリー)がいい。可愛くて綺麗で喜怒哀楽の表現がいい。適役である。劇中で彼女の出自が少しだけ明らかになるが、果して両親は誰なのか興味はさらに深まる。

フィン役のジョン・ボイエガもよくよく見れば、若い頃のデンゼル・ワシントンをちょっと丸くしたようで悪くない。顔が藤田まことのように長いだけでなくバカでかい、印象の悪かったカイロ・レン役のアダム・ドライヴァーも見慣れたせいか、抵抗がなくなった。

そして、ルーク・スカイウォーカーである。隠遁生活に浸かり過ぎたようで、前半はほとんど動かずに、じれったくてイライラさせられたが、やればできるでないの。彼がミレニアム・ファルコン号に懐かしそうに乗り込むシーンがあった。そこで眠っていたR2-D2が突然起きだして再会することになる。

前作、ハン・ソロとレイア姫の再会シーンでも述べていて繰り返しになるが、長い年月を隔てて、同じ役者が同じ役を演じるのである。これに感動しないのは不感症である。ルークとR2-D2の40年前の出会いのシーンをリアルタイムで見ている私は、たかがロボットが相手なのに思わず涙してしまった。私は不感症ではないのだ。

そのRD-D2や、今作でも無くてならない活躍をみせたBB-8の表情や仕草も役者顔負けで、たかがロボットにこれだけの思い入れをしてしまうのも、このシリーズならではである。

そしてルークとレイア姫の双子の兄妹対面もちょっと感動的だった。そのレイア姫のキャリー・フィッシャーが亡くなったのは昨年の12月である。ということは、昨年末にはすでにほとんどのシーンは撮り終えていたと想像できる。世界同時公開されるまでのこの一年は、CGとの合成や編集作業に費やされていたとも想像できる。つまりは膨大なおカネと時間をかけて作られているということだ。

さて、最終章は2年後の12月ということらしい。レイの両親は誰なのか。レイア姫は誰が演じるのか。ジョージ・ルーカス、ジョン・ウィリアムズはじめスタッフや出演者のみなさん、それに私も含め、それまで元気でいたいものですなぁ。

いよいよ今年もあと僅か。この一年鑑賞した映画の総括をしないといけない。

今年もいよいよ残り僅か。そろそろ年賀状の準備なんぞしなくてはいけない。あと見に行くつもりの映画は「スターウォーズ」一本に絞っていたが、その前にもうひとつ、家内がジョニー・デップのファンということもあって、「オリエント急行殺人事件」見てきました。
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この作品はシドニー・ルメット監督の1974年版で鑑賞している。(原作は未読、今作鑑賞直前にも再見して臨んだ)従ってストーリーも犯人も分かっている。前作と何がどう違うのかを気にしながら鑑賞した。

物語は1935年、イスタンブールからパリ経由カレー行きのオリエント急行が舞台になるのだが、その5年前に起こった、幼女誘拐殺人事件が大きな鍵となっている。前作ではその幼女誘拐殺人事件の概要の説明があってから本題に入っている。が、今作はその事件の説明無しに、物語のなかで次第にその内容が明らかになっていくという展開だった。

この違いは重要である。なぜならこの物語は、この幼女誘拐殺人事件抜きには語れないからである。繰り返しになるが、その事件が物語の重要な伏線になるだけに、前もって触れて欲しかった。前作を踏襲することなくヒネったつもりだろうが、返って説得力もインパクトも弱くなってしまった。

出演者の顔ぶれも、ショーン・コネリー、イングリッド・バーグマン、アンソニー・パーキンス、ジャクリーン・ビセット、バネッサ・レッドグレーブ、リチャード・ウィドマーク、アルバート・フィニー、といった前作と比較して、ジョニー・デップ、ペネロペ・クルス、ジュディ・デンチ、ウィレム・デフォー、ケネス・ブラナー、「スターウォーズ」のレイ役デイジー・リドリー(これがまた綺麗なこと)も出ていたけれど、やっぱり前作には敵わない。

ということで、ケネス・ブラナー監督版VSシドニー・ルメット監督版の新旧対決は、大きな差をつけて旧作の勝利となりました。

雑誌スクリーン1月号の解説によると、この撮影のために機関車から客車、食堂車など一式を製作したとのこと。そのオリエント急行列車が、イスタンブールの街並みを出発し、旧ユーゴスラビアの山岳地帯(地図で調べたら、この辺りはディナル・アルプス山脈というらしい)を煙を吐きながらシュッポシュッポと走る光景は、たとえCG合成とはいえ圧巻でした。この作品で贅沢な列車旅行が疑似体験できたと思ったら・・・まぁいいか。

先日鑑賞した映画「ローガン・ラッキー」はウェストバージニアの田舎を舞台にした犯罪モノだった。犯罪モノではあったが、主人公のチャニング・テイタムと、別れた女房に引き取られた幼い娘が交流するシーンが、オマケのように随所に挿入されていた。

ハラハラ・ドキドキさせる犯罪モノも好きではあるが、ほのぼのさせる生活感の漂う、こういった雰囲気の作品も嫌いではない。

映画は始まって早々にこの父娘の場面からスタートした。ジョン・デンバーの熱烈なファンであるらしい父親がそのジョン・デンバーの素晴らしさを語っているところから始まった。バックではそのジョン・デンバーの「Some Days Are Diamonds」が流れていた。
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物語の終盤、地元のなにかのイベントで娘がひとりで歌うシーンがあった。普段はめったに来てくれない父親が会場にいるのを認めた幼い娘は、歌う予定だった曲を突然変更して「パパが大好きな歌を歌います」といってジョン・デンバーの「故郷へ帰りたい」を無伴奏で歌いだす。

♪♪ Almost heaven, West Virginia
  Blue ridge mountains, Shenandoah river ♪♪

5~6歳の娘が歌う、つたない歌なんだけれど、やがて会場の人たちが一緒に歌いだし合唱になっていく。そうか、ここはウェストバージニアなんだ。私もよく知っている曲だったから思わず声には出さず、口ずさんでしまった。

我が国には地名を題材にしたいわゆるご当地ソングが、数え上げたらキリがないくらい思いつく。考えてみれば、アメリカにもけっこうあるわけで、この8月に亡くなったグレン・キャンベルの「恋はフェニックス」「ガルベストン」、さらに古いところでシナトラの「ニューヨーク・ニューヨーク」、さらに・・・これも数え上げたらキリがない。

と、数え上げたらキリがないご当地ソングではあるけれど、私の住んでいるN海高野線のH市近辺には残念ながらこれが無い。(「和歌山ブルース」があるが、これは和歌山市であってちょっと遠すぎて圏外)考えてみれば私のふるさと名古屋にも無い(はずである)。

ということで、

♪♪ Country roads, take me home
  To the place I belong
  West Virginia
  Mountain mamma, take me home
  Country roads ♪♪

と合唱できる人たちを羨ましいと思ってしまった ハリー東森 でした。

今年も残り僅か。あと見に行くつもりの映画は「スターウォーズ」くらいか。その前にもう一本。公開からだいぶ経ってしまったが「ローガン・ラッキー」見てきました。監督が「オーシャンズ」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ。

その「オーシャンズ」がラスベガスを舞台にした洒落た都会のテイストなら、こっちはウェストバージニアの田舎臭いローカルな味わいの犯罪映画といったところで、けっこう楽しめました。
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要領のあんまり良くなさそうな、おバカな兄弟(チャニング・テイタムとアダム・ドライバー)のズッコケ犯罪話と思って見ていたのに、終わってみれば「オーシャンズ」同様、観客までダマしていたという手口で、こういった心地よい後味の作品、嫌いではない。

主人公のチャニング・テイタムが、別れた女房と幼い娘(既に子持ちの男と再婚し別の家庭を持っている)の家族と、友人のようにごく自然に接するシーンが何べんも出てきた。こういった感覚はまだまだ我々日本人には理解できない、アメリカ社会の当たり前の文化なんでしょうか。(その別れた女房役がケイティ・ホームズで、実生活ではトム・クルーズが元夫というのが重なってしまった)

それに、あっち(アメリカ)ではクスクス笑える場面だと想像はつくのだが、こっちではこれが分からない。これも文化の違いのようで、我々はパスするしか仕方ない。このあたりは「寅さん」や「釣りバカ」など、日本人にしか理解できないクスグリと同じなんでしょう。

それでもニヤッとさせるシーンがいくつかあった。例えば、いよいよ犯罪開始の爆破決行というせわしないときに、こんな材料で爆弾になるのかと詰め寄るおバカな兄弟に、時間を割いて化学式を壁に書いて講義を始めた爆弾男には笑ってしまった。

その爆弾男がダニエル・クレイグで、ジェームズ・ボンドとはまったく違う、危ないキャラクターを演じてこれがいい。典型的な悪人ヅラのこの人は、こういう役がピッタリだ。もうすぐ終わりというところで出てきたヒラリー・スワンクも久しぶりでした。

弟役のアダム・ドライバーも「スターウォーズ フォースの覚醒」ではイヤーな役で、まったく気に入らなかったが、こっちではトボけた良い味を出していて、次の「スターウォーズ」がちょっと楽しみになってきた。

ということで「オーシャンズ」に比べて(比べるのもおかしいかもしれないが同じ監督ということで)出演陣が貧弱で、出来ももうひとつかとは思ったら、終わってみればそうでもないと、思いなおした作品でした。

さて次は「スターウォーズ」か。

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