シヌマDEシネマ/ハリー東森

2015年04月

とある建物の一室。一人でひたすらドラムを練習する若者。壮年の男が入ってくる。帽子を取るとスキンヘッドである。その人物に驚いて思わず叩くのを止める若者。音楽院に入学したばかりの若者と音楽教授の、これからの出来事を暗示するような緊迫した出会いから「セッション」は始まった。

教授が去ったあと、その建物から夜の街に出た若者。アップテンポのジャズが流れ出す。・・・この最初の5分ほどでスクリーンに引き込まれてしまった。全編を通して鳴り響いた音楽に圧倒された。いやー面白かった。

150424_whiplash1


鑑賞後ずっと、J・K・シモンズ演ずるフレッチャー教授の、音楽の先生としての教育方法を反芻している。あのやり方は、ただただ生徒の音楽性を伸ばすための愛の鞭(原題の whiplashはこの鞭の意)だったのか・・・、いやいや、やっぱり違う。意地悪、口悪、陰険・・・そんな言葉しか出てこない。音楽に対する情熱は認めるが、あの教育方法はいけない。

迫真の憎まれ役を演じてアカデミー賞助演男優賞かぁ。それで思い出した。「カッコーの巣の上で」(1975年)で、ジャック・ニコルソンをイジメぬいた看護婦長ルイーズ・フレッチャーも、悪役で主演女優賞だったんだ。女優の名前が奇しくもフレッチャーで同じというのはどうも偶然とは思えない。

残念だったのが、主人公を演じたマイルズ・テラーがイマイチだった。相当に練習を積んだんでしょうが、ドラムを叩く仕草がどうもサマになっていないような気がした。もっとも私が持っているドラマーのイメージは、ジャズではなくロック系の人たちなんですが・・・。

終盤の大詰めは、フレッチャー教授の陰険さが最高潮に達して盛り上がった。原題のwhiplashはフレッチャー教授率いる楽団が練習を繰り返す曲名でもあり、この曲がラストの伏線になっている。

この作品の宣伝チラシや公式HPには、各界の著名人がコメントを寄せている。以下その抜粋。

150424_whiplash2



たしかにラストは大盛り上がりのクライマックスではあった。けれど最後の最後のシーンで、主人公と教授が分かり合ったような雰囲気で終わったように見えた。これはいけない。このふたりは絶対に分かり合うはずがない。と、思いたい。

150424_whiplash3


J・K・シモンズはこれまでまったく印象の無い俳優だった。トビー・マグワイヤが演じた「スパイダーマン」で主人公がカメラ担当としてアルバイトしていた新聞社の編集長を演っていたんだ。へーえ。気がつかなかった。

もうひとつ。主人公の父親役で出ていた俳優がどこかで見た顔だが思い出せなかった。後で調べたら「エイリアン2」でリプリーと子供のニュートのお腹にエイリアンを宿らせて、地球に持って帰ろうと企んだバーグという、いけ好かない役を演っていたポール・ラーザーでした。ああ懐かしい、まだ頑張ってましたか。こういう発見も映画の楽しみのひとつである。

昨年の夏頃だったか、アップルウォッチ発売のアナウンスが流れたときから、楽しみにその発売を待っていた。電波ソーラーでワールドタイム機能がついた腕時計を買うつもりだったのを止めて、アップルウォッチにしようと思っていたわけで・・・。

ところが、その価格・仕様が明らかになるにつれ、ガッカリ感が漂ってきた。先日梅田に出た際にヨドバシカメラに寄って、予約受付中のアップルウォッチを腕に着用し、係員から説明を受けて、そのガッカリはさらに決定的になった。

何がガッカリか。まず基本的にアップルウォッチ単体では機能しないこと。iPhoneとの通信によって電話やメール、アプリのダウンロードが可能になるわけだ。腕に着けたコレに口を寄せて電話したり目を近づけてメールしたり (そんな頻繁に電話もメールもせえへんし、そんなん街中で恥ずかしぃて、でけへんでぇ) スマホ並みにアプリも使えるらしいが・・・、だったらiPhoneの存在はどうなるの。

いちばんのガッカリはバッテリーが18時間しかもたないことだな。(これは公表数値で実際はそれ以下でしょう) スマホの充電さえ面倒なのにこれではいかんわ。海外旅行へ着けていっても飛行中にバッテリー切れだわな。これでは使用に耐えられん。

それに価格がいちばん安いもので42,800円は高い。私が欲しいと思うステンレスバンドのものは119,800円もするのだ。おそらく1年2年ですぐに新製品は出るだろうし、iPhoneと同じようにOSやアプリのバージョンアップに旧機種は置いてけぼりになるんでしょう。それを考えると高すぎる。

繰り返しになるが、iPhoneの機能を詰め込んだアップルウォッチ。iPhoneが無いと機能しない。だったらiPhoneとの使い分けはどうするの?だったらiPhoneだけでいいんでないの?これが素直な感想。これしきのコストパフォーマンスなのに、すでに100万個以上の予約が入って、生産が追いつかないというのが理解できない。まだ発売前だし、しばらく静観しましょ。

ジャパネットタカタでは、カシオの電波ソーラーでワールドタイム機能がついた腕時計が9,800円で売っている。これにしよっかな。

「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」見てきました。いやー疲れた。満足感と共に疲労感が残った作品でした。例えていえば、軽い気持ちのモーツァルトではなく、面と向かってベートーベンを聴いた後のような、そんな感じ。舞台側から眺める舞台裏の世界。いかにも業界関係者に受けそうで、アカデミー協会の会員が作品賞、監督賞に選んだのも分かるような気がした。だったら主演男優賞もマイケル・キートンにやったらええやん、可哀想やんか・・・。それが鑑賞直後の感想。

疲労感はどこからきたのか。それは最初から最後まで、気の抜けない緊張がずっとあったからでしょう。冒頭と終盤近く、隕石が落下しているような映像があった箇所あたりにカットが入ったくらいで、あとは全編ワンカット風(あくまで“ふう”)の、舐めるようなカメラワーク。撮影が「ゼロ・グラビティ」でも長回ししたエマニュエル・ルベツキだそうで納得。映像を繋いでいるシーンをまるで粗探しのように気にしてしまった。まずこれで疲れた。

もうひとつ、バックで流れる不安を煽るようなドラムが効いた。時々思い出したようにオーケストラによる普通の演奏も流れたが、ほとんどが即興的なドラムソロだった。これがさらに緊張感を持続させた。これまで経験したことのない映像体験ではあった。監督があの「バベル」の監督かぁ。なるほどなぁ。

かつて「バードマン」シリーズのアクション映画で一世を風靡したものの落ちぶれて、ブロードウェイの舞台で起死回生を目指す主人公を、「バットマン」(1989年)でバットマンだったマイケル・キートンが演じれば、いやでも現実味を帯びてくる。

劇中でロバート・ダウニー・Jr,の「アイアンマン」を揶揄したり、ジョージ・クルーニー、ジェレミー・レナー、マーティン・スコセッシなど実名が出てきたりするから、さらに現実と重なってくる。ニューヨーク・ブロードウェイの舞台裏はこんなんかいな。

150413_birdman


共演陣も達者だった。エドワード・ノートンの下半身まで迫力のある演技に感心したし、ナオミ・ワッツはちょっとスレた舞台女優を演じてやや意外だったが気品の良さは隠しきれずやっぱり好きな女優だし、「オブリビオン」でトム・クルーズとペアを組んだアンドレア・ライズブローがここで出ていましたか。

終盤、悲劇で終わると思いきや喜劇に転じ、タイトルの「無知がもたらす予期せぬ奇跡」の意味が明らかになったものの、前述の隕石が落下しているような映像の意味は理解できず。ラストシーンのエマ・ストーンが見上げた視線の先には何があるのかも想像できず・・・。やっぱり疲労感が残った作品だった。

この作品、良かったか悪かったかといえば、たしかに良かった。おもしろかった。好きか嫌いかと聞かれると・・・、好きな作品ではないな。

先月の中旬からWOWOWでは加山雄三の若大将シリーズ全作品を、ウィークデイの毎夜7時から一作品ずつ放映している。ちょうど我が家の夕食の時間と、その後の食器洗い担当が重なって、チラチラ眺めるだけでまだちゃんと見ていない。

150407_wakadaisyo


若大将シリーズは、1961年の「大学の若大将」を皮切りに1971年の「若大将対青大将」まで、10年間に17作品、その10年後の1981年に「帰ってきた若大将」が制作されている。リアルタイムで1~2本は見たような気がするが記憶が定かでない。何本かはテレビで見てはいるが、全18作品となると初めてである。

あらためて見てみると、当時の街並みや車、服装など、あの頃の世相が懐かしい。澄子さん(星由里子)を挟んで田沼・若大将と石山・青大将(田中邦衛)の恋の鞘当ては毎度のことで、これぞマンネリの極み。しかしここまでやられると愛着を感じてしまう。

そのヒロインも、若大将がサラリーマンになった13作目からは酒井和歌子に、最後の18作目は坂口良子だったんだ。有島一郎、飯田蝶子、左卜全・・・。当時テレビに喰われ、斜陽産業といわれた映画業界をなんとか支えてきた東宝映画ですよ。

劇中で毎回歌われる4~5曲の挿入歌もこれまた懐かしいし、(すべてが弾厚作作曲ではないようだが)知らない歌もけっこうありました。ちょうどいま我々のバンドでやっている「旅人よ」は1967年の「レッツゴー若大将」の中で歌われていたんだ。加山雄三はやっぱり我が国のシンガーソングライターのハシリだな。

これはDVDに、永久保存ですよ。

昨日、京都府園部在住のYさんの呼びかけで、昔の職場の仲間が5名ほど集まり、春爛漫の京都に行ってきました。

150404_kyoto1


JR嵯峨野線花園駅で下車し、妙心寺内にある退蔵院のしだれ桜から始まって、仁和寺、龍安寺、平野神社、北野天満宮の桜を愛でながら歩いてきました。天気予報通り、残念ながら午後から降られたけれど、雨に濡れた桜もまた、いいではないですか。

  花びらは 散りゆきけりな いたづらに
         京に雨ふる ながめせしまに
                     大野大町

それにしても、まぁ人のすごいこと。相変わらず中国もしくは台湾の人たちが圧倒的だったが、西洋人も多かった。観光客の半分くらいが外国人のような。さすが観光都市京都だわ。

150404_kyoto2


北野天満宮から京都駅まで市バスに乗ったところ、停留所ごとにその周辺にまつわる解説があったり、英語、韓国語、中国語で停留所の案内が行われていた。昨年市バスに乗った折にはなかったはずなのに・・・。京都市交通局のHPで調べたら、2011年の春から、洛バスと呼ばれる観光系統のバスに限って、このサービスがあるとのこと。さすが観光都市京都だわ。

それにしてもその車内放送が、英語、韓国語、中国語の順というのがちょっと面白かった。さぞかし中国人観光客から「英語はまぁ許すとしても韓国よりは先にせぇ!」と、クレームがついているのではないかと心配しながらも、なぜか小気味好かったのである。

このページのトップヘ