先週、名古屋近郊K市に住まう母親のところに行く途中の出来事。 家を出ていつものように難波に向かう電車に乗った。私が座った席のちょうど隣に白人女性ふたりの先客がいた。高野山の周辺が世界遺産になってからこっち、この某N海電車高野線に乗車する外国人が増えたようだ。
海外からの団体ツアーはおそらくバスで行くんでしょうが、電車に乗って高野山に向かう外国人は個人旅行なんでしょう。大きなリュックを背負った、いわゆるバックパッカーを多く見かける。
さて、その隣に座っていた白人女性ふたり。ドアの上にある路線図の案内板を見たり、停車するたびに駅名を表示した看板のローマ字をたどたどしく読みながら、手元の地図らしきものを見て、ふたりでボソボソと話している。どうやら降りる駅を気にしているらしい。
私はといえば、浅田次郎の文庫本「一刀斎夢録・下巻」を読みかけたのだが、隣のふたりの様子が気になってしかたない。チラチラと窺っていると、どうやら母娘のようで僅かに聞こえる会話は英語ではない。フランス語か?ちがうなぁ分からない。
これまで幾多の英会話に挑戦するも挫折してきた私だが、ここはだまって見過ごせない。助けてやろう。しかし、怪しいオッサンだと警戒されるのもいややしなぁ。私の経験からして、ローマでもパリでもロンドンでも、ウサン臭いお兄ちゃんやオバサンに声をかけられて、アブナイ目に遭いそうなことがあったからなぁ・・・。そういうヤカラと思われてもかなわんしなぁ。
と気にしつつも「おねえちゃんたち どこ行くねん」・・・とは聞けなかった。「Where you going?」と思わず声をかけてしまった。すぐ隣の若いほうの女性が笑顔で「シンイミャミュア」と答える。「Shin-Imamiya?」「シンイマミヤ」「Oh I see」どうやら怪しいオッサンとは思われなかったようだ。
新今宮駅で降りたいらしい。まだだいぶ先だ。「よっしゃ分かった。駅の手前に来たら教えたる」と英語で言いたいのだが出るわけがない。出た言葉が「French?」「イタリアーノ ローム」「Oh・・・」ここから先の会話が進まない。
「ローマでっか。たしか2000年に行きましたわ。美しい街でんなぁ。トレビの泉でジプシーの少女から新聞を買え買えとしつこく付きまとわれたことがありましたわぁ」などと話したいのだが話せるわけがない。今思えば中学のときに覚えたジリオラ・チンクエッティの「夢見る想い」を唄ったら驚いたろうねぇ。「ノノレタ ノノレタ ペラマルティ ノノレタ」・・・若いから知らないか。
やがて電車は新今宮のひとつ前の駅で停車。「Next station」「アリガトウ」こんな会話しかできないのが情けない。新今宮で降りる時もふたりは「アリガトウ」と言ってくれた。4つしか思い出せないイタリア語の単語の中から「チャオ」で返した、日本の怪しくないオッサンでした。