10年前、いや5年前でも興味はなかったはずだけれど、この4月から夫婦揃って年金生活者となる身にはそろそろ切実になってくるのでしょう。そんな作品「愛、アムール」見てきました。
劇中で病名は明らかにされないが、おそらく頸動脈狭窄症から脳梗塞を患い半身不随になった妻と、献身的に介護する夫の物語。舞台はパリ。冒頭のピアノコンサートのシーンを除いて、カメラは夫婦の住まうアパルトマンを一歩も出ない。妻の発症から結末までの老老介護の様子が粛々と描かれる。その結末はなんとも切ない。
ジリジリするような長~いワンカット。BGMは一切無し。時々しか映さない人物のアップ。ミヒャエル・ハネケ監督の作品は「白いリボン」で経験済みだが、アクション映画に親しみ過ぎた私には、なんともテンポがゆったりと流れる。これを文学的というんでしょう。低俗な私にはなんとも高尚に映る。
映画とは楽しむためにあるものだと確信している私に、将来起こり得るかもしれない現実を突きつける。映画は時として残酷になる。これが夫婦愛のカタチだとしたら、切な過ぎる。いや、これが愛なんでしょう。そうだ “これも愛、たぶん愛、きっと愛” と、松坂慶子も唄っていた。・・・やっぱり私は低俗だ。
なぜか20歳のときに、職場の先輩女性と見に行った「ある愛の詩」(1970年)を思い出した。この中の名セリフ「愛とは決して後悔しないこと」これを思い出したのだ。
老いた夫を演じるのが、シャバダバダ、ダバダバダの「男と女」(1966年)のジャン・ルイ・トランティニアン。当時36歳のシャバダバダも47年経つとこうなるんだ。つくづく歳はとりたくないねぇ。
ということで、人生の終末は是非ピンピンコロリでと願望する ハリー東森 でした。