シヌマDEシネマ/ハリー東森

2011年10月

3年前の「ザ・マジックアワー」(昨夜も民放で放映していた)のおもしろさに惹かれて「ステキな金縛り」見てきました。可笑しくてホロッとさせて、いやーおもしろい作品でした。

毎日を楽しく暮らすには、ユーモアという要素も必要なものだと考え、常日頃から実践しているつもりの私にとって、三谷幸喜という人が持っているユーモアは共感するところが多い。この作品も、けっして下卑た笑いに流されることなく、上品なユーモアがちりばめられていました。

111030_sutekinakanasibari立川志の輔が何かの落語のマクラで、悲しい話をひたすら悲しく語るのは難しくないが、笑いの世界となると受け取る側の感性の違いがあって難しい。つまり悲しい話は誰が聞いても悲しいと感じるが、笑いとなると同じギャクでもおもしろいと思う人と、しょうもないと感じる人があると語っていた。同感である。それだけに、笑いをベースに人を引きつけるのは難しいのだが、この作品は上手に笑いを醸し出していた。

我々の若い頃に比べ、趣味や娯楽の多様化が云われて久しいが、映画の世界でも多様化、つまりターゲットの細分化が進んでいると思っている。若者に受けようとする映画、年配に迎合する映画、女性に絞った映画、小難しい映画好きに媚びる映画・・・。この作品は老若男女を問わず誰にも受け入れられそうな、いまどきめずらしい映画かもしれない。

監督(脚本家)が作りたいものを作って、出演者やスタッフが楽しんで参加しているようで、それが観客にも受けるという、映画としては理想的な構図と受け取りました。

さて来年2月頃発表の、小難しい映画好きの人たちによって選ばれる「キネマ旬報」の2011年邦画部門で、この作品が何位になるのか今から楽しみだなぁ。

楽しみにしていた映画ではあったが、タイトルの「カウボーイ&エイリアン」からして一抹の不安はあった。「味噌汁とロールケーキ」とか「茶碗蒸しとアイスクリーム」といった下痢をしそうな、似つかわしくないと思っていた組み合わせの予感が当たってしまい、ガッカリの作品だった。

西部劇の要素としてはけっして悪くない。好きになった女性のために足を洗った盗賊の首領。この男、なぜか記憶を失っている。その男につきまとう謎の女性。町を牛耳るボスとどうしようもないドラ息子。そのボスに目をかけられているが正義を貫こうとする保安官。ここまでの展開はワクワクさせられた。

ところがエイリアンの登場で、おもしろくなりかけた西部劇が単なるお粗末な、エイリアン退治映画になってしまった。物語の冒頭で提示したいわゆる “つかみ” がぜ~んぶ中途半端になって描ききれていない。広げすぎた風呂敷がまったくたためていない。これではいかん。

それに出てきたエイリアンがこれまた良くない。ちょっと前に鑑賞した「世界侵略:ロサンゼルス決戦」でも述べたが、遠い星からやってきたエイリアンたちは知能も、持ち得る技術も高度なはずなのに、なんでこんなにグロテスクで野蛮なのか。人間たちに素手で襲いかかる姿はまるで野獣である。もっと知的であってもいいと思うのだが・・・。先日鑑賞した「猿の惑星:創世記」のサルたちのほうがよっぽど賢そうだった。

111025_ce_2もうひとつガッカリしたこと。製作総指揮のスピルバーグはいったい何をやっていたのか。このレベルの出来でOKを出したとしたら問題である。出演者にしてもそうだ。名前の売れていない俳優であれば、西部を舞台にしたチョットおもしろい軽いSF映画として許せるのだが、ハリソン・フォードとダニエル・クレイグともなると、これはイカンでしょう。

ということで、久しぶりに腹が立った映画。しかし当たり外れは映画の常で、これも映画のおもしろいところ。いい勉強になりました。

さてもう1本、何を見ようかと考えて「キャプテン・アメリカ」を、3Dではなく通常字幕版で鑑賞。米国製マンガを題材にした映画は「アイアンマン2」を最後に劇場で見るのは“もうええわ”と思っていたが、この映画にはトミー・リー・ジョーンズが出ている。

111020_captain_america1トミー・リー・ジョーンズといえば、このところ缶コーヒーのCMのけったいな宇宙人でしかお目にかかれない。やっぱりこの役者はちゃんと映画で見たいではないか。劇場で見るのは「ノー・カントリー」以来久しぶりなのだ。

さて、映画のほうはというと、同じ日に見た「一命」の陰気で悲惨な雰囲気に比べると、同じ映画でこうも違うかという両極端の、まさしくマンガの世界である。第二次大戦が舞台ということで、戦争映画を少しは期待したのだが的外れ。所詮マンガの世界でした。

主人公クリス・エバンスがガリガリでひ弱な肉体から、筋肉隆々の肉体へと変身するのだが、その映像マジックには感心させられた。この映画の見所はそこだけである。しかし、CGでここまでやられてしまうと、これから先、恐怖を感じるのである。

111020_captain_america2シュワルツェネッガーやスタローンの筋肉質や、ちょっと古くて恐縮ではあるが、クラウディア・カルディナーレの肉体美、スザンヌ・プレシェットの美貌といったものが、CGでどんなんでもできるわいとなってしまったら、それはイカン。絶対にいかんではないか。

将来の映像マジックの行く末に心を痛めながら鑑賞したせいで、トミー・リー・ジョーンズの演技がどんなんだったかよく覚えていない ハリー東森 であった。

愛知県K市でひとり暮らす母親のところで数日間お世話になってきました。一日ポッカリ空いたので、映画のハシゴをしてしまった。特にコレといって見たいものが無いので、あれこれ考えてしまう。1週間後であれば迷わずに「カウボーイ&エイリアン」を見るのだが・・・。

111019_ichimeiで、1本目は「一命」を鑑賞。関ヶ原、大坂冬夏の陣といった戦乱が終息したものの、没落して負け組となった侍が、勝ち組となった大名屋敷を訪れ、嫌がられるのを承知で切腹を申し出て金銭を巻き上げるという、偽装切腹詐欺を題材にした話。

話もおもしろいが、ストーリーの構成も巧みで最後まで引っ張られた。7月に鑑賞した「小川の辺」もナカナカだったし、我が国の時代劇もまだまだ捨てたものではないのかも。

しかし、主人公 市川海老蔵一家のまぁ悲惨なこと。これ以上の悲惨はないというほどミジメである。吉永小百合の「母べえ」(2008年)も悲しくてどうしようもなかったが、こちらのほうは、最後に海老蔵がギョロ目でチャンチャンバラバラとハジけてくれたので、少しは鬱憤が晴れた。

勝ち組大名、井伊屋敷の襖などの意匠が異様だったし、坂本龍一の音楽は映像とシンクロして、カラーなのにモノクロのような雰囲気が出ていて印象的だった。

話は少し変わるが、最後に出てくる井伊家のお殿様が平岳大で、NHK BSで放映中の「塚原卜伝」(これがナカナカいい)にも出ているのだが、両親が平幹二朗と佐久間良子だそうで、父親とそっくりで驚いてしまう。

さて映画のハシゴでもう1本見たのだが、これは次回。

「猿の惑星:創世記」見てきました。映画ファンとして当然ながら、この作品に対する興味はすこぶるあったのだが、期待となると実のところあまり抱かなかった。

往年の映画ファンであれば、おそらく誰しもが何らかの熱い想いを込めて語るであろう、あの「猿の惑星」(1968年)の後から次々と作られた続編は貧弱すぎてよく覚えていないし、ティム・バートン監督のリメイク版(2001年)はティム・ロスのまさしく猿まねの迫真演技だけが光っていてあとは忘れてしまったし・・・で、今回もあまり期待はしなかった。

111011_sarunowakuseiところがどっこい、予想を超えて良く出来た作品だったというのが鑑賞後の感想である。サルが知恵をつけていく過程や、ヒトに取って代わっていくストーリーにも説得力があったし、なによりヒトの演技よりも猿たちの演技に感心してしまった。ヒトよりも生き生きと描かれている。

CGを駆使した映画には批判的な私だが時と場合によるわけで、バカとハサミは使いようというが、まさしくCGも使いようのいい例である。

この映画の主人公であるサルのシーザーが施設に入れられてからが特におもしろい。施設の事務員や仲間のサルたちにさえ虐待されるシーザーが、やがてサルたちのリーダーとしてのし上がっていくその様子がいい。サルたちを引き連れ障害を乗り越えながら森を目指す姿はリーダーそのものである。今の我が国に必要なのはまさしくシーザーのようなサル、いやいやヒトなのだ。

ちょっとほめすぎた。ストーリーに説得力があると前述してしまったが、シーザーが入れられた霊長類保護施設といったものがホントにあるのかねぇ。それにその施設にあんなにたくさんのサルたちがいるのだろうか。舞台となったサンフランシスコの動物園のサルを全部解放して集めても、あんなたくさんにはならないと思うし、シーザーが住んでいた家の隣のご主人も災難続きで笑わせるが、これもストーリーを進めるためには必要なんでしょう。

施設の事務員が部屋で見ていたテレビにはチャールトン・ヘストンが映っていたが、あれはオリジナル版「猿の惑星」ではなかったような・・・、エンドロールを必死に探したが確認できなかった。

昨今の映画業界の当たり前となっている続編だけは作らずに、出来の良かったこの作品でどうか打ち止めにしていただきたいと願う ハリー東森 である。

111006_redheat先日WOWOWで放映していた「レッドブル」(1988年)。見始めたら止められず、ついつい最後まで見てしまった。公開当時はまぁまぁおもしろいと思ったのだが、今見るとやっぱり色褪せてよろしくない。どんどん過激さを増していくアクション映画の宿命とでもいうか、今となってはどうも物足りなかった。

シュワルツェネッガーも若い。「マトリックス」のローレンス・フィッシュバーンがラリー・フィッシュバーンの名前で出ていた。まだ痩せていて、これも売り出す前でまだ若い。

シュワルツェネッガーとジェームズ・ベルーシがプライベートな会話をする食堂の、ジュークボックスで流れていた曲が懐かしく、聞いたことのある曲だが題名が思い出せない。エンドロールで確認したら「Stranger on the shore」でした。


YouTube: Stranger On The Shore - Acker Bilk

映画のほうはもうひとつだったが、挿入曲にグッときて、思わず iTunes から購入してしまった ハリー東森 でした。

昭和44年、奈良工場に配属された新入社員が14人。そのほとんどが途中で辞めてしまう中、あちこち転勤しながら最後まで残ったのが5人。

そのうちのM君が、故郷の金沢に戻って暮らしているというので、鹿児島出身奈良在住のT君、静岡出身東京在住のI君、愛知出身和歌山在住の私、この3人で金沢を二泊三日で訪ねた。兵庫出身福岡在住のH君に声をかけるのを忘れてしまい、集まったのが4人。

4人が揃って同じ職場にいたのは最初の2年ほどだったが、同じ会社で40年以上のサラリーマンを経てきたわけで、これまでの話、これからの話、はなしが尽きない

ちょっとだけ色づいた兼六園 徽軫灯籠

111004_1ひがし茶屋街

111004_2111004_5長町武家屋敷跡

111004_6 湯涌温泉 夢二館案内図

M君の案内で市内の史跡や文化施設をたくさん巡った。泉鏡花、徳田秋聲、室生犀星が金沢三文豪だそうで、お恥ずかしいが徳田秋聲という人はこの歳になって初めて知りました。竹久夢二も金沢に縁のある人だったんだ。60にもなるのにまだまだ知らないことばっかりだわ。

次回は来年の春、どこか温泉に行こうということになった。候補地は乳頭温泉か白骨温泉だとさ。どちらも行ったことがないのでよぉ分からん。ゆっくり検討すればいい。

そうだ、忘れずに福岡のH君にも声をかけんといかん。

「ロビンフッド」以来のラッセル・クロウ主演「スリーデイズ」見てきました。「ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」などの脚本を手がけているポール・ハギスの監督・脚本というのも見たかった理由。フランス映画「すべて彼女のために」(2008年)のリメイクとのこと。

111001_nexttreedays殺人罪で逮捕され有罪が確定した妻を、一介の大学教授の夫が悪の道に手を染めながら妻の脱獄を計画・実行する話。妻は夫に、自分が殺ったとも殺っていないとも告白していないのに、夫は妻の無実を信じひたすら脱獄を遂行する。私ならとてもできない。私ならあきらめて次を探す。

妻は殺人者なのか無実なのか・・・。これが主題ではないが、無実のはずだがひょっとして・・・。そんな緊張感が物語の興味を持続させた。どうやってオトシマエをつけるのかと気になったが、まぁ落ち着くところに落ち着きました。

最近のアクション映画はハデになるばかりで見ているぶんには気持ちがいいのだが、どうもサスペンス感となると乏しい作品が多い。脱走の過程は久しぶりにハラハラ・ドキドキさせてくれた作品でありました。

「ランボー」(1982年)で悪徳警官を演じたブライアン・デネヒーがラッセル・クロウの父親役で渋い演技をしていたが、イッキに老けた感じで驚いた。

たまたま昨日のWOWOWで、オリジナル版フランス映画「すべて彼女のために」を放映しており、これも鑑賞した。リメイクされるだけあってナカナカの作品でした。こちらの妻役はドイツ女優ダイアン・クルーガーで、「イングロリアス・バスターズ」でのドイツ語はもちろん、「トロイ 」「ナショナル・トレジャー」での英語が上手なのは分かるが、フランス語も流暢に喋っており感心してしまった。

あまり詳しくは語れないが、オリジナル版では殺人事件の真相を最初のほうでバラしてしまうが、リメイク版では後のほうにもっていった。このあたりをポール・ハギスは手を入れてリメイクしたかったのではないかと推察する。

このページのトップヘ