ビートルズを好きだと言う若い人たちに少しだけ自慢できるのは、私たちはリアルタイムでビートルズと同じ時空を過ごしてきたことだ。「SUPER 8」を鑑賞して、これと似たような感想を持った。スティーブン・スピルバーグやジョージ・ルーカスが台頭してきた1970年代は、それまでの映画には無かった、なにかワクワクするような新しい面白さを感じたものである。
脚本・監督を務めたJ・J・エーブラムズは1966年生まれの45歳だそうで、9歳で「ジョーズ」、11歳で「未知との遭遇」「スターウオーズ」、13歳で「エイリアン」、16歳で「E.T.」をリアルタイムで経験した、映画大好き少年だったんでしょう。そういった映画に対する想いが伝わってきた作品だった。
お話の時代も、テレビニュースでスリーマイル島の事故を報道しているシーンが出てきたので1979年。主人公の少年は母親を勤め先の工場での事故で亡くしたばかりで、保安官の父親とふたりっきりになるのだが、これは父親に逃げられて母親と暮らす「E.T.」の家庭と似ている。
なかなか姿を現さない”何か”。出てきても少しずつしか姿を見せてくれない”何か”。結局最後までどんなものだったか良く分からない”何か”。これは「エイリアン」の描き方と似ている。その”何か”がパトカーを押しつぶしたりするシーンや音楽は「未知との遭遇」と似ている。
そんな前述の映画を思い起こす場面が多々あるのだが、これは映画大好き少年だったJ・J・エーブラムズの敬意の表れだと受け取った。話の細部に説明不足やツメの甘さはあるものの、主人公(ジョエル・コートニー:15歳)をはじめ少年たちの瑞々しい演技も良かった。
なにか純真無垢な少年に戻してくれたような作品だった。