シヌマDEシネマ/ハリー東森

2010年01月

今年初めての映画館で「Dr.パルナサスの鏡」見てきました。撮影中の2008年1月に処方箋薬物の過剰摂取(雑誌スクリーン2月号による)で急死したヒース・レジャーの遺作で、その代役をジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルが引き継いだ作品。

現代のロンドンに突如、馬車に曳かれて現れた移動劇場で、パルナサス博士率いる大道芸人たちの出し物は、お客を鏡の中の異次元の世界へ誘うというもの。パルナサス博士は「サウンド・オブ・ミュージック」で「エーデルワイス」を唄ったクリストファー・プラマー。老けたが健在。

100131_drparnassusテリー・ギリアム監督はこの移動劇場兼住居(これがよく出来ている)で繰り広げる中世の衣装を身にまとったまるで時代錯誤的な芸人たちと、鏡の中のポップでビジュアルな映像との対比の妙で、映画を鑑賞する観客までをも不思議な世界へと誘ってくれる。

と、ここまで述べると、おもしろそうな作品のようであるが、私には・・・退屈な作品であった。不思議な世界へ誘ってくれたまではいいが、そこからさらに入り込めなかった。鏡の中はあの大塚美術館で見たダリの絵のようなシュールな世界だったし、ヒース・レジャーの後を継いだ男優たちも(前もって分かっていたせいもあり)そんなに違和感はなかったし・・・。

せっかくの美味そうで豪華な料理が、私には口に合わなかった。そんな感じだな。なんで合わないかずっと考えているが、私にもよく分からない。つまらんかったんだからしょうがない。合わないものはしかたない。

しかし、ハマる人にはたまらない作品なんでしょう。こんなのがまた、知ったかぶりをしたがる評論家にも受けるんでしょうねぇ。

つい先日、新年を迎えたと思っていたのに、早や1月も終わりである。いつものことだが、こうして寒い寒いといっているうちにもやがて桜が咲きはじめ、いい陽気だなぁといっているうちに暑くなり、暑い暑いといっているうちに秋風が吹きはじめ、もの思いにふけるうちにまた、寒くなる。まっこと一年が早い。そして、季節とともに老いていく・・・さみしいねぇ。

100127grantorino昨年も小欄で紹介した年賀状の図案。今年のはコレ。これに小欄でも紹介した2009年鑑賞映画一覧をつけてレイアウトした。

先日、名古屋近郊のK市に住む母親のところに行ったとき、年賀状の話になった。母は昨年から年賀状を出すのを止めて2年目になる。本人に言わせると(出すのは)「もう えぇ」そうだ。何が「もう えぇ」のか、なんとなく分かる。私もいつかそんなときが来るような気がする。

さて、その母親に私が出した年賀状はどうなのか聞いてみた。「字が小っさーて、見えーせんぎゃあ」「字はええわぁ そのポスターは分かるんかいな」「あぁ これなぁ これアノ西部劇によう出とる役者だなぁ」「役者はええわぁ そのタイトルやんかぁ 今年はトラ年やろ?」「タイトルなぁ ふんふん 分かるでぇ」

昨年 米寿を迎えた母親にはやっぱり分かってもらえなんだわぁ。

先日WOWOWで「ザ・クリーナー 消された殺人」(2007年)を放映しており鑑賞した。劇場公開されたことさえ知らず、まったく記憶にない作品だが、主演がサミュエル・L・ジャクソンで共演がエド・ハリス。監督がレニー・ハーリンとなると思わず見たくなる。

レニー・ハーリンといえば、「ダイ・ハード2」(1990年)で颯爽と登場し、「クリフハンガー」(1993年)では、脂っこくないチョット控えめなスタローンの山岳アクションでナカナカ見せて、将来の期待を持たせてくれた。

しかしその後がいけない。当時の奥さんジーナ・デイビスを主役に起用した「カットスロート・アイランド」(1995年)、「ロング・キス・グッドナイト」(1996年)は物足りなかった。というより、前の2作と比べてしまうからいけない。その、いつの間にか忘れていたレニー・ハーリン監督である。さて、どうか。

100126_cleanerタイトルの「ザ・クリーナー」は、サイクロン掃除機の話ではない。殺人事件などで惨憺たる状況になった現場を、何事も無かったようにもとの状態に戻す、専門の掃除屋のことである。その会社の経営者であり作業員が主人公のサミュエル・L・ジャクソン。

主人公は警官だったが、奥さんが強盗に殺され、今は娘と暮らしている。ふたりは過去の暗く悲惨な思い出を背負いながら助け合って生きている。この設定がいい。ある日、いつものように警察署からの依頼で殺人現場のクリーニングを行うがそれは正式の依頼でなく、実は殺人の隠蔽をするためのものだった。その片棒を担いでしまった主人公は、その裏に警察官への大規模な収賄事件が絡んでいることを知って・・・。

監督のレニー・ハーリンはこれまでのハデなアクションは影を潜め(というより、お話の展開上アクションがない)、緻密な描写を心がけたようで、こんな演出もできるんだという意外な印象を持った。こんな職業がホンマあるんかいな。という興味とともに、主人公の置かれた境遇や話の展開がおもしろく最後まで引っ張られた。

しかし、結末に向かって盛り上がると思いきや、こじんまりと収束してしまい、ちょっとアイデア倒れという感じで勿体無い。勿体無い。主人公の元相棒の現役警察官として、捜査を助けるエド・ハリスは私よりひとつ年下なのに、えらく老けて痩せたねぇ。どこか悪いみたいだな。

雑誌スクリーン3月号には、外国映画の2009年興行収入ベストテンも掲載されている。その作品は以下の通り。

  1 ハリー・ポッターと謎のプリンス   79億5000万円
  2 レッドクリフ PartⅡ          55億2000万円
  3 マイケル・ジャクソン THIS IS IT 44億1800万円
  4 ウォーリー               40億円
  5 天使と悪魔               33億5000万円
  6 ターミネーター4            33億1000万円
  7 マンマ・ミーア!            25億8000万円
  8 地球が静止する日          24億2000万円
  9 ベンジャミン・バトン 数奇な人生  24億円
 10 トランスフォーマー/リベンジ    23億1000万円

ヒット曲が名曲だとは限らないように、ヒットした映画が必ずしも良い映画とはいえないまでも、たくさんの人がお金を払って映画館に足を運んだのだから、それなりに魅力のある作品なんでしょう。それとやっぱり家族連れや若者に受ける作品が強いんだろうねぇ。

先日発売された雑誌スクリーン3月号に、評論家が選出した外国映画ベストテンが掲載されている。その作品は以下の通り。

     1 グラン・トリノ
     2 スラムドッグ$ミリオネア
     3 愛を読むひと
     4 レスラー
     5 イングロリアス・バスターズ
     6 ベンジャミン・バトン 数奇な人生
     7 フロスト×ニクソン
     8 ミルク
     9 チェンジリング
    10 マイケル・ジャクソン THIS IS IT

48名の評論家が選んだ10本の作品を、1位10点、2位9点・・・10位1点と重みを付け、集計した結果、上位10本が上記の作品というわけ。

各評論家が選んだ10作品と選出理由が掲載されているが、まぁみなさんのバラバラなこと。まさしく、十人十色、千差万別でおもしろい。所詮、映画の良し悪しの判断や好みなどは人それぞれということだ。

1位の「グラン・トリノ」を、1位から10位の中のどこかで選んでいる人が28名。つまり残り20名は10本の中に挙げてもいない。以下「スラムドッグ$ミリオネア」を選んでいる人が20名。「愛を読むひと」は18名。10位の「THIS IS IT」に至っては7名となる。だから何なの?と問われるとチョット困るが、要するにこれだけバラツキがあるということが言いたいわけ。

昨年もたしか小欄で取り上げた、白井佳夫氏の10本は

     1 ポー川のひかり
     2 シリアの花嫁
     3 レイチェルの結婚
     4 長江に生きる/ビンアイの物語
     5 扉をたたく人
     6 サンシャイン・クリーニング
     7 あの日、欲望の大地で
     8 牛の鈴音
     9 アライブ 生還者
    10 失われた肌

で、見事にベストテンの作品とカスってもいない。白井氏は「グラン・トリノ」のイーストウッドおじいさんのやさしさに感動しなかったんだろうか。「ベンジャミン・バトン」のイケメン・ブラピにドキドキしなかったんだろうか。もうこうなると、へそ曲がり評論家という枠を超えて、この人独自の映画観があるようで、崇高な気配すら感じてしまう。

スクリーン3月号には、昨年我が国で公開された外国映画297本がリストアップされている。現在ブレイク中の「アバター」は、このベストテンの原稿締切りの時点では見ていない評論家がほとんどのようで、おひとりだけ選出していた。お正月用として年末ギリギリに公開される作品はチョット不利だな。

ちなみに、キネマ旬報でも2009年ベストテンが発表されているが、これはまたその特集号が発売されてから感想など述べたい。

頚椎症による肩と腕の痛みが良くならない。ここは温泉にでもゆっくり浸かれば良くなるかも・・・。と、この週末 思い立ち、我が家から90kmほど離れた有馬温泉に。

昨年暮れに他界したマリオンがまだ元気なときは、泊りがけで家を空けるとなると、近所に預けたりして大変だった。天国の彼には申し訳ないが、彼がいなくなって躊躇なく家を空けられるのはいいことだ。やっぱりこの先、犬は飼わないことにしたいねぇ。

100118_arima1有馬温泉は30年ほど前に職場の社員旅行で行ったきりでまったく記憶になく、初めてのようなもの。






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100118_arima3宿泊した旅館








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露天風呂の手前が金泉、向こうが銀泉。金泉は鉄分と塩分が湯船の底に沈殿しており、ザラザラ。いかにも効きそう。







さて、しかし、頚椎症による肩と腕の痛みは、やっぱり良くならない。

持病の頚椎ヘルニアについて。
十数年前、左手の指先が痺れるので病院でMRIを撮ってもらったところ、7段ある首の骨のひとつが後ろにズレて、はみ出しており、後頭部から背中にかけて通っている神経を圧迫しているのが原因とのこと。いわゆるこれを頚椎症というらしい。何事にもシビれるのが好きな私にとっては、少々指先がシビれるのもWelcomeと受け取り放っておいた。というより、上手に付き合ってきたつもりだった。

ところが、一昨年の12月に左肩から左腕にかけてガマンできないような痛みに襲われた。そのときは薬を服用し数週間で痛みが無くなり安心したのだが、昨年の暮れからまたこの痛みが出てきた。左肩から左手首あたりまでのあちこちが日替わりで、ギュッとつねられたような痛みが持続する。一昨年からお世話になっている病院で前回の薬を服用するが今のところ良くならない。

病院の医師は、「悪い病気ではありませんから・・・」とのたまう。おいおい、病気に良い病気とか悪い病気とかあるんかいな。私にはその言い方が、「そのくらいの痛みは我慢しなさい。死にゃーせん」と聞こえる。おいおい、それがガマンできんから病院に来たのだぞ。

根本から治してくださいと頼むのだが、この病院には設備が無いので大きな病院を紹介します、希望の病院があれば紹介状を書きます。とのたまう。このまま痛みが引かなければ病院を変えよう。しかし、この痛さには参った。何をするにもネガティブな気分になってしまってどうもいけない。

話は少し変わるが、我が家の団地内にいわゆるかかりつけの開業医がおり、高血圧の薬をもらいながら定期的に診てもらっている。このお医者がウンチクをタレるのが好きで、いつぞやは“ヘルニア”の話になった。ヘルニアとは、ヒトの臓器などの器官が所定の位置からズレた状態をいうらしい。

胸やけでこのお医者に診てもらったときの診断で「キミィ、胃ぃが少し上がっとる。・・・胃ぃのヘルニアだな」「胃ぃにもヘルニアがあるんですか?」から、こんなウンチクを聞かされた。この先生、目が大きく、タレており、目の間隔も常人より相当広い。まるで「アバター」に出てくる異星人のようだ。「先生! 目ぇが ヘルニア ですよ」

先日WOWOWで放映していた「追憶」(1974年 監督:シドニー・ポラック)を鑑賞した。今年に入って初めての映画であり、この作品も初見である。

勉学もスポーツもスマートにこなすハンサム優等生ロバート・レッドフォードと、全共闘の女闘士のようで、ひたむきに行動するバーブラ・ストライサンドが主人公。第二次大戦前の大学時代から、戦後の共産主義に対する弾圧、いわゆる赤狩りのあたりを舞台にしながら、ふたりの恋愛、結婚、別れが、あの名曲をバックに描かれて、これがナカナカ見せる。

自分のことを不細工、不器用と知っていながら、ロバート・レッドフォードに惹かれていくバーブラ・ストライサンド。一風変わったバーバラ・ストレイザントに興味を持って接触するロバート・レッドフォード。ふたりのなりそめから興味深く引き込まれてしまう。

映画のヒロインはブサイクではいかん。というのが私のモットーだが、この場合は許されてしまうケース。

やがてふたりは一緒になり、レッドフォードはハリウッドで脚本家として成功する。しかし、お互いの主義・主張が受け入れられず、子供を授かりながらも別れることになる。”子はカスガイ”というが、”カスガイ”にならなかったケース。

別れてから何年か経過し、ふたりは偶然再会する。そのとき、彼女は相変わらず街頭で原爆禁止のビラなんかを配っており、彼の隣には美しい伴侶がいる。別れ際に交わすふたりの会話には、それまでの人生がギュッと詰まっているようで、なんとも切ない。その後から彼女の歌声がかぶさってきて、さらに切ないエンディング。日本語字幕は高瀬鎮夫

     「娘は?」
     
「美人よ 自慢の種だわ」
     
「うれしいよ 彼も可愛がってる?」
     
「ええ とても」
     
「よかった」

     「じゃあ また」
     
「またね」


原題の「The way we were」もいいが、邦題の「追憶」もたまらなくいいねぇ。大人の映画。

私がリアルタイムでミュージカル映画を見たのは「マイ・フェア・レディ」(1964年)が最初である。この時期、すでにミュージカル映画は衰退期に入っていたようで、それ以前の華やかなりし頃のミュージカル映画を紹介してくれたのが「ザッツ・エンターテイメント」(1974年)であった。

この作品で、ジーン・ケリーの「雨に唄えば」や、ジュディ・ガーランドの「虹の彼方に」など、数々の名場面・名曲を見せてもらった。この映画はその後、パート2(1976年)、パート3(1994年)が制作されている。

そして「バンド・ワゴン」(1953年 監督:ビンセント・ミネリ)である。この映画の中で唄われる「That's Entertainment」が前述の映画「ザッツ・エンターテイメント」のテーマ曲だということを発見し、まず感動した。(当然、映画「ザッツ・エンターテイメント」の中で紹介されているはずだが、これも古い作品なので忘れてしまっている)

唄はコレ

さらに「バンド・ワゴン」でフレッド・アステアとシド・チャリシーが夜の公園で踊るシーンがあり、それも映画「ザッツ・エンターテイメント」で紹介されていたあの場面だということを発見し感動した。バックで流れる音楽も、よく耳にするメロディでこれも感動。

曲は「Dancing in the Dark」 音楽だけでも、あぁシビれる。

どちらもYouTubeにアップされているが、画質も音質も悪くて可哀想になる。

映画としては、なんせ57年前の作品である。今の時代にはマッチしない。現代と比べれば、生活様式や価値観、もっといえば文化さえ変貌している。従って鑑賞には十分に耐えられない。しかしこれはしかたないことで、最近の映画でも30年40年も経てば同じ運命になるはずだ。

57年という歳月の積み重ねを意識しながら、まったりした気分でこの「バンド・ワゴン」を鑑賞すると、なんとも甘く、やさしく、ロマンチックな気分にさせてくれる、古き良き時代のミュージカル映画である。

正月休み明けの仕事はシンドイねぇ。通勤電車がツラい。が、これがサラリーマンなのだ。

さて、前回からの続き。
昨年テレビで鑑賞した映画で、洋画ワースト3を上げると、ひとつ目が「マゴリアムおじさんの不思議なおもちゃ屋」(2007年 監督:)だな。ダスティン・ホフマンとナタリー・ポートマンでありながら、なんともつまらん愚作でした。隣でカミさんが一緒に見ていたから最後まで見たものの、ひとりだったら途中で止めていた。というより、ひとりでは見ることのない映画。

あと2作品は「ブラインドネス」(2008年 監督:フェルナンド・メイレレス 主演:ジュリアン・ムーア)と「シャッフル」(2007年 監督:メナン・ヤポ 主演:サンドラ・ブロック)。どちらも、もうおもしろくなるだろう、もうおもしろくなるだろうと思いながら最後まで見てしまい、結局ガッカリのおもしろくなかった作品。

邦画でいちばんおもしろかったのは「容疑者Xの献身」(2008年 監督:西谷 弘)だな。テレビドラマの延長だということを知らずに鑑賞した。昨年末に再放送していたそのドラマを見たがドラマのほうはもうひとつだった。

ただ、主演の福山雅治はチョット気に入った。その流れで、まったく久しぶりの大河ドラマ「龍馬伝」の第一回を見てしまった。始まったばかりの導入部ということもあり、淡々と何の盛り上がりもないので、シラケ気味に見ていたが、岩崎弥太郎:香川照之ともつれて、橋から川に落ちたところ。龍馬が語りだす場面は、これからおもしろくなりそうな雰囲気ではあった。

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