シヌマDEシネマ/ハリー東森

2009年12月

今年映画館で鑑賞した作品を良かった順に並べました。
A:良かった B:まぁまぁ C:ダメ の分類。7月1日付け小欄で、上半期のまとめをしているが、そのときから若干順位が変わっている。映画の印象というものは時が経過するとともに変わっていくのでしかたない。

     1 A チェンジリング        猟奇事件が次第に明るみになっていく
                          過程がたまらなくうまい。
                          噛めば噛むほど味が出てくる作品
    2 A スラムドッグ$ミリオネア  インドカレー喰いたいー
    3 A グラン・トリノ          強いイーストウッドが見たかったが
                           歳だからしゃーないです
    4 A イングロリアス・         タランティーノのテクニックに
                バスターズ    すっかりハマってしもた
    5 A チェ 28歳の革命       ベネチオ・デルトロはこれで大トロに
                           なったのだ
    6 A ベンジャミン・バトン      そのケはないはずなのに、20歳のブラピに
             数奇な人生      ドキドキしてしまった自分がコワ~イ
    7 A スター・トレック        青春アクションムービーだ。若いっていいねぇ
    8 A アバター              まぁお金をかけたなりにようできたる
                           これが本当の「アバターもエクボ」だ。
                         サブゥ~
    9 A 96時間             あーおもしろかった。で、何も残らない
                                               映画。しかしコレも映画
                           もっと評価されてもいい傾向の映画
   10 B 愛を読むひと         アンバランスで濃密な男女関係がつらい
                           ホロコーストでさらにつらい
   11 B マンマ・ミーア!        イタリア語ひとつ覚えたでぇー
   12 B ターミネーター4        もうおしまいにしませんか
                            またやったらやっぱり見てまうやん
   13 B パブリック・エネミーズ     監督も俳優も揃えば、それなりの作品が
                                                できるでしょ
   14 B サブウェイ123 激突     同上。
   15 B 天使と悪魔            同上。ローマ観光がでけたぞー
   16 B ワールド・オブ・ライズ     人のことは言えんが、ラッセル・クロウ君
                            みっともないでぇ。痩せなはれ
   17 B ホノカアボーイ          倍賞千恵子もそりゃぁ歳とるわな
   18 B 2012               エメリッヒ監督ゥ。ここまでやってしもう
                           たら、そろそろネタ切れやおまへんか
   19 B アマルフィー 女神の報酬 行ってみたいなアマルフィー
   20 C チェ 39歳別れの手紙   ベネチオ・デルトロさん。せっかくの
                           大トロが腐らないようにしてチョーダイ
   21 C ワルキューレ          トム・クルーズには似合わん役でした
   22 C 007/慰めの報酬      たとえアクション映画でもアクション
                             だけではダメという見本だな
                                                007だから許せない
   23 C ハリー・ポッターと      オッサンにはアホらしゅうて見てられ
              謎のプリンス          まへん。はよ終わろうよ。

昨年の2008年に比べると、今年は良い作品に恵まれました。上位6位まではどれを1位にしてもかまわないくらい納得の作品。やっぱり映画はおもしろい。
さあ、来年も見るゾー。

これが今年最後の映画館になるでしょう。「アバター」見てきました。”インディアンの豊かな生活を侵略する白人たち”といった西部劇の構図をベースに、想像力豊かにパンドラ星の動植物が創造され、愛あり、活劇ありの、おもしろい作品でした。

雑誌スクリーン2月号によると、キャメロン監督の前作「タイタニック」(1997年)の製作費が当時最高の2億ドルで、今回も映画史上最高の5億ドルとのこと。それも、俳優のギャラに金をかけず、他のところに注ぎ込んでいるのは明白。

091228_avatar前作のレオナルド・デカプリオもケイト・ウィンスレットも売り出す前だったし、今作のサム・ワーシントンもゾーイ・サルダナもそれぞれ「ターミネーター4」「スター・トレック」の前に起用された新人みたいなもの。そうそう「エイリアン2」の縁故であのリプリーのシガニー・ウィーバーが出ていたが、この人はギャラ高いだろうねぇ。

ジェームズ・キャメロン監督の作品は第一作の「殺人魚フライングキラー」(1981年)は印象が薄いが、それ以降の作品、例えば「ターミネーター」にしても「アビス」にしても、”映画はこんなにおもしろいのだ”という想いが作品から伝わってきて、今作も含めて嫌いではない監督である。

さて商業用映画で、3Dというものを初めて鑑賞したが、疲れたねぇ。USJのアトラクション「ターミネーター」から10年近くたって、立体映画というものがさらに進化していると期待したのだが、なんら変わっていなかった。

2時間40分の長時間、メガネの上にさらにメガネをかけて見続けるというのは、オジサンにはシンドい。それに立体的に見える箇所に目が注目してしまい、どうも映画本来の楽しみ方ができないな。なんかせっかくの映画が”見世物”になったようで(映画自体が見世物だが、ちょっとニュアンスちがう)残念だね。

その昔、ヒッチコック監督の「ダイヤルMを廻せ」(1954年)は立体映画で制作されたそうで、以前から立体映画に対する商業化の方向性はあったようだ。映画産業の健全な発展を願う ハリー東森 としては、3Dが映画のひとつの可能性としてあるのは否定しないが、現状ではまだまだ一般的なレベルではないと感じた。

メガネをかけず、立体映画だと意識せず、臨場感のある映画が鑑賞できたらいいねぇ。

昨年のクリスマスイブには小欄で「ダイ・ハード2」からのクリスマスソングを紹介したが、今回も私の好きなアクション映画「リーサル・ウエポン」(1987年 監督:リチャード・ドナー)で流れていたクリスマスソングを聴きますか。

オーストラリアで売れ出したメル・ギブソンがハリウッドに進出して、この映画でブレイクしたはず。共演のダニー・グローバーとの掛け合いも絶妙で、これだけ息の合った刑事コンビは他に思いつかない。1998年に作られた4作まで、すべて同じ監督という例もちょっとめずらしいはず。

クリスマスといってもケーキを買うわけでもなし、家人とプレゼントの交換をするわけでもなし、シッポを振って”お帰り”をしてくれるマリオンがいなくなって穴があいたように淋しいが、それ以外はいつもと同じ Silent Night である。

映画の冒頭、タイトルシーンで流れるのが「Jingle bell Rock」 唄うはボビー・ヘルムズ。

我が家に昔からいるマリオンが冬至の夜、逝ってしまった。

091223_marion

So Long Marion


思えば、上の息子が高校生で、下の娘が中学生の時に我が家に来たのだ。それから16年半。家族と一緒に喜怒哀楽を味わってきたはずなのに、「さよなら」も何も言わずに逝ってしまった。お前ほんとうは「ありがとう」とか「お世話になりました」とか「もっと生きていたかった」とかも言いたかったんだろ?


この時が来るのを覚悟していたはずの家内がやはりいちばん落ち込んでいるが、ほとぼりが冷めたら、また飼おうと言い出すに違いない。そのときはきっと反対しよう。あと1年ちょっとで私は定年になり、家でゴロゴロするわけだ、つまり「オレがペットになったるがな」と言って反対しよう。

しかし、「アンタはタダのオッサンや」と逆にやり込められるだろうから、その反論を今から考えておかねばならない。

我が家に昔からいるマリオンの調子がすこぶる悪い。この4日間、水だけでほとんど何も口にしていない。なんとか食べさせても戻してしまう。来年の春には17歳を数える老齢のミニ・ダックスフントは家族に見守られながら、静かに生を繋いでいる。

ほとんど昏睡状態のように眠っているのだが、突然起きては部屋の中をフラフラと歩きだし、やがて立ち止まり、遠くを見るようにジッとしている。私にはそれが、悟りきってひたすらその時を待っているような崇高な姿に映る。彼にとっては、生きてきたことも自然なら、お迎えが来ることも自然なのかもしれない。それがまるで仙人の境地のように見えて、見習いたいところではある。

彼がいちばん懐いていた家内はこの二晩、夜を通して付き添い、献身的な面倒をみている。おいおい、オレのときも頼むでぇ。

前回、小欄で「外国映画50本」の報道を取り上げた。その中に「男と女」(1966年 監督:クロード・ルルーシュ)が入っていたが、今でも鑑賞に耐え得るかチョット心配してしまう。この作品は以前にも小欄で述べているが、その心配事を含め、さらに述べたくなった。

お互い子持ちで単身の男(ジャン・ルイ・トランティニアン)と女(アヌーク・エーメ)が子供が通う保育園で偶然知り合い、お互い惹かれ、やがて一緒になる。という映画。ストーリーとしてはたったそれだけの、ゆうたらしょうもないお話である。

091217_otokotoonna1ところがこれが、フランシス・レイの音楽と、クロード・ルルーシュの斬新な映像がシンクロすると、シビれるのである。いや、シビれたのである。今までに、このテの映画がたくさん作られて、今見ると陳腐かもしれないが当時はこれが新しかった。

つまり、何が言いたいのかというと、映画のおもしろさはストーリーだけに依存するものではないということ。ストーリーは大切な要素で、それが良いことに超したことはないが、それだけではないということ。だから、映画が総合芸術・・・芸術というとまた難しくなりそうだから、総合エンターテイメントといわれる所以なのだ。「男と女」という映画は私にとって、まさしくそのことを体験させてくれた作品だった。

さらに付け加えると、時代を超えていつまでも光り輝く名作もあれば、アノ時代だから良かったという作品もあるわけで、「男と女」は私にとっては後者の部類に入る。というより、数ある名作映画の中で、後者のほうが断然多いのはしかたないことである。なぜかといえば・・・長くなるのでこれはまた別の機会に・・・。

091217_otokotoonna2浅田次郎著「カッシーノ!」(幻冬舎)によると、この「男と女」のロケ地となった海沿いに建つ”ホテル・ノルマンディー”には「アヌーク・エーメ」という名前が付いたスイートがあり、いまでも彼女が宿泊に訪れるそうだ。行ってみたいねぇ。

映画の終盤、意を決っした男が女のアパートを訪ねると不在で、階下の奥さんに行き先を尋ねるが教えてもらえず、玄関のドア越に警察官と偽って聞き出すところ。その前後に、あのダバダバダが流れてシビれるのだ。

今朝の産経新聞の特集記事で知ったのだが、”外国映画50本を厳選し、来年2月から1年間、全国25カ所の映画館で毎日午前10時から上映するというユニークな映画祭「午前十時の映画祭 何度見てもすごい50本」(主催・映画演劇文化協会)の50作品が決まった。・・・サンケイニュース”といったことが報じられていた。

そのような催しが行われていたことも、これからの詳細もよく知らないが、選ばれた50本の洋画を眺めてみた。これがナカナカおもしろい。何がおもしろいかというと、堅っ苦しくないのがいい。フツウ評論家などが選ぶ映画というと、おタカくとまった、さも難しそうな作品ばかり並べたがるが、そうでないからおもしろい。

「第三の男」「ローマの休日」といったスタンダードな作品がありいの、「アラビアのロレンス」「ベン・ハー」といった大作がありいの、「ライトスタッフ」「ワイルドバンチ」といったシブめがありいのと楽しくなってくる。「男と女」なんかがあって、さらに気分が良くなるではないか。

どうやら娯楽作品(・・・この定義も難しい。映画そのものが娯楽ではないかと思っているのだが・・・)を重点に選ばれたと記事には載っているが、キネマ旬報のベストテンを見るより、よっぽどナットクできるねぇ。

「ダーティ・ハリー」が無いではないかと怒りかけたら、ちゃんと「ブリット」が入っている。他にもよくぞこの映画を選んだわぃ。といった嬉しくなる作品が多い。品田雄吉氏ら映画評論家が中心となって選んだそうだが Good Job だな。

ちなみに、この50本のうち、11本も見ていない作品があるにもかかわらず、ヌケヌケと 「シヌマDEシネマ」 なんぞといったタイトルを掲げ、このような文章を綴っている ハリー東森 なのである。

今年もあと残り僅か。映画館に足を運ぶのもあと1回か2回くらいか。で、「パブリック・エネミーズ」見てきました。1930年代の実在の銀行強盗ジョン・デリンジャーを描いた作品。

監督が「ヒート」(1995年)のマイケル・マンが描くギャング映画となれば、男くさい硬派な作品であろうと想像したが、その通り。可もなく不可もなく、無難に仕上がっておりました。デリンジャーを演ずるジョニー・デップはカリブの船長のチャランポランさは影を潜め、ちゃんとオトコを演じておった。当たり前だけれどやっぱり役者だねぇ。

フランス女優マリオン・コティヤールとの恋愛模様を軸に展開すると思いきや、これが意外とあっさりで、反対に物足りなく、男女の機微をもっと情緒的に描いてもいいのにと思うのだが、このあたりがマイケル・マンらしいところかも。女々しくならない。

091213_publicenemiesデリンジャーを追っかける捜査官クリスチャン・ベールも「バットマン」の坊ちゃん御曹司とはまた違った味わいで、主役にけっして引けを取っていない。私はジョニー・デップよりこの人のほうが好きだねぇ。捜査官に率いられる部下たちも、銀行強盗の仲間達も、みなさん個性的な悪漢ヅラで、一緒に見たウチのカミさんに言わせると、”どっちがどっちか、分からへん”。その通りでした。

小欄の「チェ 28歳の革命」でも述べたが、この作品の銃撃戦でも、空気を切り裂いて炸裂する銃弾の音は本当に迫力があって感心してしまう。このところの音響技術の進歩がこういうところに出るわけだ。あとは、「Bye Bye Blackbird」をはじめとした、当時の古き良きジャズが効果的に使われていたのも良かったな。

さて、今年はあと1本。「アバター」で映画館での見納めとしますか。

なかなか直らない風邪を押して、落語を聴きに行ってきた。7~800人収容のシアター・ドラマシティは超満員。この会場に来るのは初めてで、梅田芸術劇場が入っているビルの地下にある。このあたりは梅田でも阪急からやや北にあり、あんまり来ることがないが、若者の街という感じでシャレたところだねぇ。

091210_dansyun立川談春は立川談志を家元とする立川流の11番目の弟子で、私の好きな志の輔は兄弟子にあたる。この談春もなかなかチケットの取れない人気落語家なのだが、テレビで「真田小僧」を見たのが一回だけ。あとはCDしか持っていない。

志の輔のいわゆるダミ声の落語に比べ、談春は良く通る声でチャキチャキの江戸弁が滑らかに繰り出され、芸風はだいぶ違う。その夜の演目は、滑稽噺の「棒鱈」と人情噺の「文七元結」であった。

落語というと”お笑い”という確かにそうなんだけれど、怪談噺で怖くなったり、人情噺でホロリとさせられるのもこれまた落語の奥深いところ。「文七元結」はまさにそのホロリの典型のような古典落語。その古典も落語家によって同じ噺でも細かなところで違いがあり、それもおもしろいところ。

談春は自身で出しているCDの「文七元結」とは登場人物のせりふ回しなんかをだいぶ変えていた。このあたり古典落語といいながらも、演じるたびに落語家が工夫を加えているわけだ。だから現代にも通じる古典落語になっているんでしょう。

明治、大正、昭和と一世を風靡したそうな浄瑠璃や浪曲といったものは過去のものとなってしまったが、落語はどうやらこれからも継承されていくようだ。クラシック音楽が、優秀な演奏家や指揮者によって、いのちが吹き込まれ受け継がれていくところと、伝統芸能はどこか似ている。そんな気がする。

先週の中ごろから、ごくフツウの風邪をひいてしまって、いまだに引きずっている。この週末いろんなイベントが連なり、風邪を押してチョット無理をしてしまったようだ。月曜日はもともとそのスケジュールの延長で仕事を休むつもりでいたのだが、火曜日も寝込んでしまった。今日はさすがに出勤したが、まだまだシンドイ。

だいたいこの歳になると、チョットしたケガをしても、その傷がナカナカ治らなくなる。若いときにはシュッと直った傷が治らないのだ。どうやら病も同じかもしれない。若いときと同じように忘れず成長してくれているのは、切るのが面倒くさい爪と、まだ豊かに茂る髪の毛くらいのものだ。悲しいが、髪の毛がある分まだましか。

しかし、風邪を引いたからといって突然会社を2日連続休めるわけだ。植木等が唄ったように、サラリーマンは気楽な稼業なんだろうかねぇ。

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